対処を誤れば、長期休職やうつ病に… ただの風物詩ではない「5月病」の恐ろしさ リスクを抱える人の特徴は?
4月に発生する出来事
また、この表では、4月に発生する出来事の多くがランクインしています。「仕事上の責任の変化」(29点)は、昇進、後輩ができる、担当プロジェクトが変わることが含まれ、「仕事の再調整」(39点)は、部署異動が含まれます。つまり、4月の1カ月間だけで点数が一気に加算され、「4月に前借りしたエネルギーの支払期限」が、GW明けに一気にやってくる現象が5月病だともいえるのです。
新入社員や異動者が5月に直面するのが「リアリティー・ショック」です。4月は「新しい自分」への期待(理想)が先行しますが、実務が本格化する5月には、自分の無力さや組織の不条理(現実)を突き付けられます。
筆者は、これまで約1万人のカウンセリングをしてきましたが、新卒社員の場合、以下の三つのギャップが心理的摩耗を加速させます。
(1)評価のギャップ:「褒められて伸びた学生時代」と「結果でしか評価されないビジネス現場」
(2)人間関係のギャップ:「気が合う友人やコミュニティーを選べた学生時代」と「合わない上司や同僚とも協働しなければならない現在」
(3)時間的ギャップ:「自分のペースで動けた生活」と「納期や他者の都合に支配される生活」
5月病は、単なる「やる気の欠如」ではなく、内的な自己イメージとその人の置かれた社会的役割(ロール)との「摩擦」によって生じるケースが多々あります。新卒社員の場合、学生時代の「万能感」が崩壊し、組織という巨大な機構の中での「代替可能な歯車」としての自分を突き付けられる時期ともいえます。
「べき思考」を持つ人は……
次に一つのカウンセリング事例を紹介します。
【事例:Aさん(男性24歳・大手IT企業勤務)】
Aさんは、有名大学の修士課程から大手IT企業へ入社し、4月の新入社員研修では一番優秀な成績を収め、意気揚々と花形部署へ配属されました。しかし5月に実務が始まると「電話応対一つ満足にできない」「会議で一言も発言できない」自分に絶望します。
GW以降、彼の欠勤が目立つようになり、人事部からの要請で、5月末Aさんのカウンセリングをしました。相談内容は、「大学時代の友人など自分以外は生き生きと活躍しているように見える。自分だけ置いていかれたような気分です」というものでした。
Aさんの背景には、「べき」思考(例、自分は常に優秀であるべきだ)が強く根付いていて、小さなミスを「人生全体の失敗」と過大視する傾向がありました。べき思考を持つ人は、理想の自分や周囲と比較しては、「やっぱり自分はダメだ」と自身を追い詰めていく傾向があります。また、ものごとを過大視するため、客観的事実とかけ離れたネガティブな捉え方をすることも大きな特徴です。
Aさんは会議で発言ができないことについて、「期待外れの新人だと思われているに違いない」と捉え、出社しようとすると涙が出るという話をしていました。しかし、周囲は「新人だから会議に慣れていないのだろう」と思っていたことが分かっています。カウンセリングでは、自身の思考のクセに気付き、「自身の捉え方とは別の捉え方ができる可能性はないか?」を考えること、新人としての足りなさを肯定し、理想の自分と現実の自分の間に「橋を架ける」作業が必要でした。
次に、Aさんの事例を通して、5月病という言葉の裏に隠されていることもある深刻な疾病を見逃さないためのポイントについて説明します。
[2/4ページ]


