夫が海外赴任、LAで専業主婦を強いられて…「子どもとどう接していいかわからない」 元バリキャリ駐妻を追い詰めた“密室育児”の苦悩

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 駐在妻専門カウンセラーの前川由未子さんは、海外赴任した夫に帯同した経験を活かし、駐妻にかかわるさまざまな悩み、トラブルの相談を受ける道に進んだ。世の中的には「ハイスぺ妻」と思われがち。だからこそ伝わりづらい、彼女たちの“心にひそむ闇”に焦点を当てていく。

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 夫・健さん(35歳、仮名、以下同)の海外転勤に伴い、アメリカのロサンゼルスに帯同することになったユキさん(35歳)。2歳の息子を育てる彼女は、産後もすぐに出版社に職場復帰し、フルタイムで仕事に邁進してきたワーキングマザーだ。

 しかし、夫の渡米を機にその暮らしは一変する。愛着のある仕事を辞め、幼い子を抱えて初の外国暮らし。人生で初めて、専業主婦として家族をサポートする役割を担うことになった。

 ビザの種類によっては現地での就労が認められるケースもあるが、夫の勤務先では帯同家族の就労は禁止されていた。そのため、働く意欲はあったものの専業主婦を選ばざるを得なかったという。

 いざ専業主婦としての生活が始まり、ユキさんが最も戸惑ったのは、意外にも子育てだった。

「子どもが生まれて、生後すぐから保育園に預けていたので、一日中子どもと二人きりで過ごす習慣がほとんどなくて……。子どもと連れ立って公園などに出かけても、言葉の壁もあって余計に孤独感が増すばかり。どんどん家の中にこもりがちになりました。毎日毎日、子どもとどう遊んでいいか、どう時間を過ごせばいいのか分からなくなってしまったんです」

 駐在妻たちの心の支援に取り組むカウンセラー・前川さんによれば、一般的に駐在員の家族に対する保育料の補助が出るのは、3歳の幼稚園児クラスからが対象になることが多いという。

「そのため、それ未満の乳幼児の託児は、全額自費となるケースがほとんどです。物価の高い国ではその負担はかなり重く、結果として、3歳までは自宅で育てるという選択を選ばざるを得ない家庭が少なくありません」(前川さん)

 健さんの勤務先もその例に漏れなかった。経済的な負担に加え、会社の規定という壁、さらに、コロナ以前はあったという駐在妻同士のコミュニティもユキさんの渡米時には消滅状態で、外部との接触の機会も乏しい状況。これらが重なり、ユキさんは社会から切り離され、密室育児へと追い込まれていった。

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