「銀河の一票」を明るい「選挙ドラマ」と思っていたら…黒木華×野呂佳代の物語に潜む“不朽の名作”

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茉莉はジョバンニ

 フジテレビ系連続ドラマ「銀河の一票」(月曜午後10時、制作・関西テレビ)が、第4回まで放送された。この作品は東京都知事選と政界の内幕をエンタメ化しただけの凡庸な物語ではない。宮澤賢治が遺した未完の名作『銀河鉄道の夜』を現代に蘇らせようとしている。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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「銀河の一票」の主人公は星野茉莉(黒木華)。元与党幹事長秘書だ。スナックの代理ママ・月岡あかり(野呂佳代)に惚れ込み、東京都知事選へ出馬させようとしている。2人には『銀河鉄道の夜』の主人公である少年・ジョバンニと、その親友・カムパネルラが投影されている。

 ジョバンニは孤独だった。貧しく気弱だったため、周囲から疎外された。茉莉もまた幼いころから孤独だった。現在は与党幹事長の星野鷹臣(坂東彌十郎)が父親だったからだ。第1回でこう訴えた。

「私には友だちがいません。親が政治家って知られたら、引かれるか、バカにされるか、媚びを売られるか、変な興味を持たれるか」(茉莉)

 茉莉が鷹臣から秘書を解雇された直後のことだった。鷹臣が医科大の学部長の死に関与したという疑いを茉莉が抱き、それを調べ始めた途端、クビを切られた。

 ジョバンニと茉莉が重なり合うところはほかにもある。父親が消えてしまったところだ。ジョバンニの父親は漁師だが、長らく帰宅せず、音信不通だった。

 一方、鷹臣は茉莉の目の前にいるが、人が変わってしまった。以前の鷹臣はどこかへ行ってしまった。茉莉は「変わっちゃったでしょ。お母さんが死んでから」と嘆く。相手は与党代議士の日山流星(松下洸平)だった。やはり第1回だ。

 今の鷹臣は冷酷な策略家だが、先妻の瑠璃(本上まなみ)が5年前に病死するまでは炊き出しに参加するなど人間味があった。瑠璃は茉莉の実母である。鷹臣は2年前、下半身不随の障がい者・桃花(小雪)と再婚した。桃花は元首相の孫なので政略結婚と噂された。

 一方、カムパネルラは孤独とは縁のない人気者だ。明るく、誰にでも優しい。「スナックとし子」の代理ママとして客たちに愛されているあかりと重なる。

 もっとも、カムパネルラの明るさは表面上のこと。ジョバンニの前では淋しさをのぞかせる。ジョバンニと銀河鉄道に乗り込んだあと、「おっかさんは、ぼくをゆるして下さるだろうか」と深刻に語る。

 この言葉などから、カムパネルラの母親は死んでいるという有力な解釈がある。もしくは生きていても遠い存在であり、カムパネルラは淋しく思っている。

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