“AI堕ち”とボコボコに叩かれたイラストレーター「七瀬葵」…それでも「コミケから生成AIの創作物を排除しちゃダメ」と語る理由
七瀬葵が叩かれ始めた要因
――そういった純粋な気持ちが生成AIに親しんだ動機だったわけですね。ただ、七瀬先生が生成AIを使い始めたところ、SNSやネット掲示板で「七瀬葵がAI堕ちした」などと騒動になり、ボコボコに叩かれましたよね。原因は何だったのでしょう。
七瀬:2022年の10月、同人誌即売会で初めて生成AIのイラストをまとめた本を出しました。その頃から既に物議を醸していたようですが、次に出した本がイベント会場で余ったので、「とらのあな」(注:同人誌を扱う専門店)におろしたのです。すると、ネット通販の画面に表紙や中身が登録されていないタイミングで、購入した方がいたんですね。
結果、購入者から私のもとにクレームが寄せられました。「手描きの絵じゃないんかい!」と言われ、「AI堕ち」だとか、「死ね」とか、SNSや5ちゃんねるでボコボコにされました。このときの叩かれ方は本当に酷くて、精神的に凄く追い込まれました。今も“反AI”と呼ばれている人たちに恨みや怒りがあるのは、そのためです。
――しかし、私個人としては、連日Xでアンチとレスバトルを展開している七瀬先生を見て、そこまで反論しなくてもいいのに……と思ってしまうのですが。
七瀬:そうおっしゃるのもわかりますが、有名な漫画家やイラストレーターが少しでも生成AIを容認しただけでボコボコに叩かれ、最終的に謝罪まで追い込まれた例も多いですよね。みなさん、新しい技術を試してみただけなのに、その仕打ちはあまりに理不尽でしょう。私も、最初はタコ殴りされるのを黙って受け続けていたら、だんだん鬱が酷くなって……、このまま死のうかなとなったことがあったんです。
何もやり返さなければ死んでしまう、と思ってレスを返すようになり、今に至っているのです。生成AIのイラストを発表する人はたくさんいますが、私の場合は、昔の絵柄を知っている人がいるせいで、作家性や人格否定も含めた様々な石つぶてが飛んでくる。私は“AI堕ち”したわけではなく、アナログイラストも描いています。生成AIは“楽しんでいるだけ”なのに、なかなかわかっていただけないのは残念ですね。
コミケからAIを排除するのはダメ
――昨年、一部の人たちの間で、コミケから生成AIを排除すべきという意見も出ていました。コミケで超大手サークルだった七瀬先生から見て、どう思いますか。
七瀬:コミケの理念は、どんな表現であっても受け入れ、自由に発表できるお祭りの場をみんなで作ろうというものだと思います。「これはいけない」「これはいい」と選別するとそれがだんだんエスカレートして、しまいには二次創作はダメだとか、エロと健全で分けよう、という話になりかねません。
手で描いたものじゃないからダメだ、嫌だ、と言いたくなる気持ちはわかります。しかし、生成AIはテクノロジーに過ぎません。それだけをコミケで禁止しだすと、嫌いなものは何でも排除しようと言い出す人が出てくるかもしれない。それが行き過ぎると、5年、10年後にコミケが分裂してしまう可能性もないとはいえません。
最近、一部にコミケを“絵師の祭典”と勘違いしている人もいるようですが、小説を書いている人も、旅行記を出している人も、アクセサリーを作っている人も参加しています。ごった煮で何でもありなのがコミケの大らかさであり、魅力です。先人たちはそれを理解して表現の場を守ってきたのに、好き嫌いを理由に理念を変えようとするのは困ります。
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