ロマンス詐欺の“教典”として再び脚光…マチアプで獲物を探す詐欺師が「頂き女子りりちゃん」のマニュアルを絶賛する理由

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マチアプは“カモ”だらけ

 真面目に読み込んでノウハウを身に染み込ませ、少し頭を使いながら実践すれば、本当に他人の褌だけで人生を謳歌できるかもしれない。そのターゲットは、マチアプでいくらでも見つけられる。

 オーダーメイドを装っていい加減に指南されたプロフィールは、その実、誰かと似たり寄ったりのものでしかない。心をえぐられ、弱気になっているカモがマチアプにたむろし、輝いて見える異性からの声かけを渇望していることなど詐欺師はとうにお見通しなのだ。

 自己肯定感の低下に悩み、ボンヤリと油断しているマチアプユーザーは、真っ先にカモとなり食い散らかされるに違いない。それこそ、ピラニアの巣に放り込まれたかのように瞬時に骨までにされてしまうだろう。

「りりちゃん」本人は、最初は失敗を繰り返して泣きながらやっていたが、うまく対処できるようになったのでもうトラブルはないと豪語している。距離を置いて連絡もまともに取らないのに、いまだに生活費として数万円を定期的に振り込んでくるおぢがいると、妙な余裕を見せながら語ってもいる。

 このマニュアルに記された信頼関係構築コミットの真髄は、洗脳であり調教なのだ。だからこそ、健全な交際、幸せな結婚を目指すユーザーがカモになってはならないのだ。

マニュアルを逆の視点で読む

 ところが、検索すればマニュアルそのもののアーカイブはもとより、フルサイズで転載しているブログ、解説している動画がすぐに見つかる。なかには、勝手にコピーして販売している横着者もいるほどだ。

 もはや根絶が不可能なウイルスのように」「りりちゃん」がばら撒いた“悪の教典”は、今もネット上に蔓延している。野放しにしてはならないが、かといってデジタルタトゥーとなったものを完全消去するのは容易ではない。

 社会的(パブリック)、家庭的(プライベート)な役割と承認を維持することで、はじめて人間は自尊心や人生の満足を実感し、自己肯定感を保つことができる。しかし、それらがなく壊れてしまいそうなところを必死に耐えている人間を、犯罪者は狙いすまして食い物にする。

「りりちゃん」だって、泣きながら耐えてやってきて悪のノウハウを身につけたんだ。多くの犯罪者の役に立つマニュアルを、みっちり頑張って書いたんだ。真に受けるのではなく、マニュアルの内容を逆方向に読み直してエッセンスだけをいただけば、悪の教典も善の一助となるかもしれない。

 マチアプユーザーにおかれては、くれぐれも油断めされぬよう。

 なぜ普通のマチアプユーザーは詐欺師にダマされるのか。それはアプリを使い続けると自己肯定感が下がるからだという。

 第1回【私って誰からも相手にされないんだ…「マッチングアプリ」で“自己肯定感”をサゲる人が急増中 倫理観の高いユーザーほど真剣に悩んでしまう「マチアプ」のメカニズムとは】では、マチアプで心を削られていく普通の男女について詳細に報じている──。

註:「アメリカ軍に所属する戦闘機パイロットのクヒオ大佐」と称した結婚詐欺師が1970年代から複数の被害者から金銭を騙し取り、世間の注目を集めた事件。被害総額は1億円に達するという報道もある。

井上トシユキ(いのうえ・としゆき)
1964年、京都市生まれ。同志社大学文学部卒業後、会社員を経て、98年からジャーナリスト、ライター。IT、ネット、投資、科学技術、芸能など幅広い分野で各種メディアへの寄稿、出演多数。

デイリー新潮編集部

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