ロマンス詐欺の“教典”として再び脚光…マチアプで獲物を探す詐欺師が「頂き女子りりちゃん」のマニュアルを絶賛する理由

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圧倒的な「りりちゃん」の“熱量”

 頂き女子=おぢ活のエッセンスは、以下のように語られる。

 金を出して食い物にされるおぢ(おぢさん)と頂き女子の間には、金銭のやり取り(搾取)があるけれども上下関係はなく、むしろ女子はおぢにとっての輝く大切な存在感でなければならない。

 ポイントは、「信頼関係構築コミットをしてあげる」「無害なガチ恋に仕立てる」「(あなたを)助けたいと(相手に)言わせて(こちらは黙って)お金を頂く」の3点であり、「詳しくみっちり頑張って書きました」。

 口調は今風の若い女性のそれだが、書いてある内容は筋道も立っている。無害な相手からキラキラした大切な存在だと崇められるというのは、夜の仕事に限らず、あらゆる営業活動の理想形だといってよい。

 ここまででA4用紙にびっしり3ページ分、第1章は次の4ページからだ。全10章ではA4で26ページにもなる。3万円と、おぢを騙してまで金を得ようとする境遇にいるなら決して安くはない値付けなのに1000部ほどが売れ、高評価の声が絶えず、今も実用されている。

 書かれている中身はもちろん反社会的な内容なので論外なのだが、全編を通して湧き上がる「りりちゃん」の熱量には、正直、圧倒される。

 本編に入ると、目標づくり、キャラ設定、ターゲットの見極め方、ポイント3点の解説と流れるように続き、おぢの育成方法、ヤバい相手に引っかかった時の対応まで、実体験に基づいて深掘りした具体例、迫真の経験談、状況ごとの対処例がこれでもかと披露される。

虐げられた犠牲者の“本音”

 波風を立てないような金の受け渡し方法まで懇切丁寧に説明しているあたり、かゆいところにまで手が届く親切設計と、不謹慎ながら感心してしまうほどだ。

 最後まで読み終えると、経験したことのない不思議な高揚感に包まれる。良くできたノンフィクションの趣きさえ感じた。

 さんざん悪辣な騙しのテクニックを披露しておいて、締めの部分で「じじいが貯めているお金が無駄だと思って」「私がもっと意味のあるお金の使い方をしてやろう」と書きながら、最後の最後に手のひらを返すがごとく、「お金なんてだれにも必要ないです」とつぶやくように綴っているあたりにほだされてしまったかもしれない。

 本当は、ろくでもない両親、それこそ女性を金蔓としか見ていないマニュアルどおりに役割を演じるだけのホスト、居場所を与えない社会、それぞれに虐げられた気の毒な犠牲者が強めに捻くれているだけなのではないか。

 そう思わせる、カッコつきの本音が垣間見えた気になっていたのだ。

 だが冷静に見直せば、パンクするまで推し=自分に金を注ぎ込ませるための推し活攻略本、カジュアルな仮面を被った「騙しの悪の教典」でしかない。

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