田中絹代、司葉子、石原裕次郎…昭和の懐かしき「東京・銀座」を記録した名作映画5選

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女性社員たちの憂鬱

〇「その場所に女ありて」(1962年)

 昭和30年代の今でいうキャリア・ウーマンたちの物語。

 矢田律子(司葉子)は「西銀広告」の営業部員で、今日も有楽町駅で降り出勤する。会社には、男言葉で話し自分のことを「オレ」という祐子(大塚道子)や、同僚に金を融資する久江(原知佐子)たちがいた。

 律子は広告主の新製品コンペで、ライバル会社・大通広告の坂井(宝田明)と出会う。2人は一夜を共にする関係になるが、坂井はコンペに勝つためにある策略を仕掛けていた。

 大通は電通をモデルにしている。当時の電通本社(現・銀座電通ビル)は今の外堀通りにあり、「電通通り」と呼ばれていた。

 律子は仕事ができるが、軋轢も多い。同僚の男性から「女はいいよ、とっておきの武器があるからな」などと言われる。また広告主からお見合いをしつこく勧められたりと、現代と変わらない男中心の世界が描かれる。

 ヘビースモーカーでお酒もよく飲む律子。そして当時のサラリーマンの楽しみ、麻雀も大好きだ。鳥取の名家出身の司は麻雀が全くできないので、宝田がつきっきりで教えたという(宝田明『銀幕に愛をこめて ぼくはゴジラの同期生』筑摩書房)。

 そんな律子が、社の屋上で祐子に自分の心のうちを話すシーンがある。勤めてから7年、27歳になった。これからどうなるのか。2人が話す屋上の正面には「塚本総業ビル(現・塚本素山ビルディング)とある。左手には森永キャラメルの地球儀があるので、銀座教会の近くだろうか。

 ラストは律子と祐子と久江が数寄屋橋方面へ飲みに行くシーンで終わる。その後ろ姿は、荒野を歩くごとく颯爽として見えた。

昭和30年代の銀座を駆け回るサスペンス

〇「セクシー地帯(ライン)」(1961年)

 コールガールの犯罪組織に巻き込まれたサラリーマンが、銀座中を駆け抜けるサスペンス映画で全編ロケ撮影だ。

 東洋貿易の社員・吉岡(吉田輝雄)は、服部時計店の前でスリにあい、部長から預かった書類を盗まれる。そのせいで吉岡は部長から大阪転勤を命じられ、社内の恋人・玲子(三条魔子)に相談する。

 その時2人が会うのが、築地川・万年橋付近のボート乗り場だ。背後には東京松竹劇場や新橋演舞場のネオンが見える。この頃は銀座の真ん中でボートに乗ってデートができたのだ。

 実は玲子はコールガールの犯罪組織から派遣されていた。会社と組織は契約していて、部長もその顧客の1人だ。しかし、組織は秘密を暴露しようとする玲子を殺してしまう。吉岡に容疑がかかり、逃亡生活が始まる。

 それを助けるのが、スリの女・真弓(三原葉子)だ。三原は当時、新東宝のグラマー女優として人気があった。本作ではユーモラスなスリを好演している。

 組織に追われた2人は銀座中を逃亡するが、やがて捕まりビル内に監禁される。何とか脱出して必死に逃げ、行き止まりの扉を開けると前に川が流れている。銀座と新橋の間を流れている汐留川で、川向こうの古城のような洋館は銀座全線座だ。

 銀座全線座は、現在の銀座国際ホテルの場所にあった洋画専門の名画座だった。銀座東急と改称し昭和53(1978)年まで営業していたので、覚えている人も多いだろう。

 場末の飲み屋街から場外馬券売り場まで、当時の風俗・風景を記録した貴重な映画でもある。

稲森浩介(いなもり・こうすけ)
映画解説者。出版社勤務時代は映画雑誌などを編集

デイリー新潮編集部

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