なぜDeNAは「ベストナイン捕手」を手放したのか 山本祐大トレードに見える“松尾汐恩への賭け”と交換相手の不安
懸案事項だった捕手の人材不足
一方のソフトバンクには、シーズン途中でも山本を獲得したかったチーム事情がある。球団関係者はその理由をこう話してくれた。
「一昨年のオフに甲斐拓也がFAで巨人に移籍してから、捕手はずっと懸案事項でした。まだ若くて打力もある山本を獲得できたことは本当に大きいですね。昔は投手とのコミュニケーションや投球パターンなどを覚えるのに時間がかかるため、シーズン中に捕手が移籍することは難しいと言われていました。ただ、今はデータが増えて配球面もチームから示すことができますし、投手のボールを再現できるマシンもあるため、すぐに対応できると思います」
ソフトバンクでは昨年から海野隆司が主に正捕手として起用されている。守備には定評がある。一方で、打率は今年もここまで1割台。レギュラーとしては物足りない数字となっている。それだけに山本の加入は、極めて大きなプラスとなりそうだ。
こうして見ると、異例のトレードとはいえ、山本、松尾、ソフトバンクにとってはメリットが大きいように見える。ただ、気になる点はある。山本の交換要員だ。前出の編成担当者も、この人選には疑問が残ったと話す。
「DeNAは昨年オフに外国人の先発投手が3人抜け、今年加入したコックスも肘を痛めて今シーズン中の復帰は絶望となっています。それを考えると先発投手を補強したかったと思うのですが、獲得したのはリリーフ投手の尾形と野手の井上でした。DeNAは尾形を先発で起用する方針だそうですが、これまでずっとリリーフで投げており、長いイニングでの投球は未知数です。井上も二軍では昨年結果を残しましたが、一軍ですぐ戦力になれる可能性は高くないでしょう。山本ほどの選手を出すのであれば、もっと先発で期待できる選手を獲得できなかったのかなとは思いますね」
尾形は今年先発転向を目指しており、3月28日のオリックスとの二軍戦では7回無失点と好投を見せている。しかし、4月3日に一軍昇格してからは、すべてリリーフでの登板だった。またDeNAは昨年のドラフトで、3位・宮下朝陽(東洋大)、5位・成瀬脩人(NTT西日本)を指名している。いずれも井上と年齢が近い、右打ちの内野手だ。井上は外野も守るが、決して守備力は高くなく、このあたりも編成的には疑問が残る点だった。
過去の例を見ても、移籍をきっかけに驚きの成長を見せるケースは決して少なくない。山本はソフトバンクで正捕手として存在感を示せるのか。松尾はDeNAの次代を担う捕手として、一気に台頭するのか。尾形、井上は、この大型トレードの評価を変えるだけの働きを見せられるのか。
異例のシーズン中トレードは、誰にとっての「成功」になるのか。その答えは、これからの4人のプレーが示すことになる。











