若手医師が「美容医療」に直行する「直美(ちょくび)」問題 脳外科専門医から美容外科に転身した“異色の医師”が直美に想うこと

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美容医療は「公費で学べない」

 保険診療を中心とした一般医療の現場をほとんど経験せず、研修後すぐに自由診療である美容医療の道へ進む若手医師たち。こうした現状に対し、世間からは「楽に稼ぎたいだけではないか」「派手な暮らしを求めている」といった冷ややかな視線が向けられている。

 さらに、医者の育成のためには公費が投じられるため、なぜ医師不足が叫ばれる一般医療に貢献しないのか、「税金の無駄遣いでは」など、批判の声は根強い。

 実際、元医大生で人気YouTuberの藤白りり氏が、「保険診療医の働き方は自分には合わない」として、今年4月から美容外科医の道へ進むことを発表した際には、ネット上でも同様の批判が噴出した。

 しかし、近藤院長はこうした「直美」の問題について、決して頭ごなしに否定することはしない。

「医師も1人の人間ですので、職業選択の自由があります。自分が心底やりたい分野が美容医療であるなら、それを選ぶ権利はあると思います。ただ、自由には責任が伴います。直美の医師で1番問題になるのは、知識不足、技術不足の中で、直接患者さんの治療にあたること。いろいろな意味で未熟な医師が診療行為を行えば、当然、事故やトラブルか生じるリスクが高まります」

 そのため、医療の経験を積まないまま美容医療に携わる若い医師の「教育」が重要だと近藤院長は指摘する。

「大学では美容医療を学べません。“病気ではない悩み”を扱う美容医療は、公費外の自由診療です。その教育を、大学医学部で公費を使用して行うのは、現状では難しいためです。ですから、美容医療を志すならば、美容クリニックや美容外科クリニックに就職し、そこで学ぶことになります」

 近藤院長によれば、最近は教育担当医師や指導医師が存在する美容クリニックもあるが、教育システムはそれぞれのクリニックで方法もレベルもまちまちだという。良い指導医に恵まれる場合もあれば、逆にほとんど教育や指導を受けられないまま患者に治療を行わざるを得ない場合もあるのが現状だ。

「教育をそのような偶然に任せるのではなく、美容医療業界全体が、標準化された教育システムを作り出し、どこのクリニックに勤めていても、同レベルの教育を受けられるようにすることがとても重要です。そのためには、大手の美容外科など影響力のあるクリニックの経営者や責任者が、自らのことだけでなく美容医療業界全体を考え、協力し、真剣に努力する必要があると思います」

 直美の医師でも、器用で手術や治療手技が初めからそれなりにうまくできる人、表面上の技術だけなら習得できる人も存在するだろう。だが、医療には技術以上に大切なものがあると近藤院長はいう。

「たとえば、いくつかは存在する“利益至上主義の美容クリニック”にいきなり勤務し、売り上げが評価とモチベーションになってしまうと、医師として見る景色がまったく違ってしまいます。そのような環境の中では、患者さんのための医療が見失われてしまっても当然です。一般診療の経験で得られることは、単なる技術の習得だけはなく、疾病を診断し、正しく治療計画を立て、その中で患者さんやご家族との向き合い方、合併症が起きた際の対処方法など、責任ある医師としてのあり方を、時間をかけて習得して行くことだと思います。そのような経験があってこそ、医師は『医師という職業は、患者さんと社会のためにある』という根本的な”志”をしっかり持つことができるのです。

 私はそれを若い時代、周りにいた初先輩や同輩の脳外科医から学んで、今があります。教育とは、注射や手術といった技術教育だけでなく、医師としてのあり方、志の持ち方、それも含めてのことだと思います。ですから、今現在美容医療に携わる私たち先輩医師が、その手本を日々の診療の中で示し、背中を見せることが大切だと思います。直美の良し悪しは、単純にそれを選択する若手医師だけの問題ではないと私は考えます」

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