日本はチキン大国なのか ケンタ値上げ、“鳥貴族バーガー”撤退でも揺るがない「鶏肉」の強さ

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「バーガー」もジャンル確立の一方、難しさも…

 2026年のゴールデンウィーク商戦では、チキンバーガーをめぐる競争も鮮明だった。マクドナルドは1991年に登場したチキンタツタが35周年を迎えたとして、機動戦士ガンダムとコラボし、タルタル油淋鶏風チキンタツタ、チーズチキンタツタを期間限定で投入した。今年のチキンタツタは、アジア風フレーバーやチーズを取り入れ、既存ファンと新規客の両方を狙う戦略が見えた。

 フレッシュネスバーガーは、パクチーチキンバーガーでエスニック路線を強めている。カオマンガイ、バインミー、グリーンカレーといったアジアの味は、若年層だけでなくインバウンドにも伝わりやすい。チキンは味付けの自由度が高く、エスニックとの相性も良い。

 バーガーでいえば、モスバーガーのテリヤキチキンも根強い定番だ。各社が揚げチキンやスパイスで勝負する中、モスは焼きやソースのこだわりで差別化している。

 一方、鳥貴族グループが2021年にスタートさせたTORIKI BURGER(トリキバーガー、のちに鳥貴バーガーに)は、今年3月29日で最後の店舗が閉店となった。チキンバーガー専門店として始まり、焼鳥バーガーへの転換もあったが、最終的には撤退となった。

 これはチキンバーガー市場の難しさを示している。大手チェーンが既存の集客力、店舗網、ブランド力を活用してチキンバーガーを強化する一方、専業業態でスケールさせるのは簡単ではないのだろう。21年にはてんやなどを展開するロイヤルフードサービス社もバターミルクフライドチキン専門店「ラッキーロッキーチキン」を始め、一時は武蔵小山、吉祥寺、新小岩、代々木八幡など都内に店舗を展開していたが、現在は代々木八幡店のみとなっている。これはバーガー専業ではないもののバーガーを中心に据えたメニュー設計だった。

 つまり、消費者はチキンバーガーを食べたいのではなく、マクドナルドの限定チキンタツタ、KFCのチキンフィレバーガー、モスのテリヤキチキンといった、ブランド文脈込みで選んでいるからだ。

「宗教」面でも強い?鶏の可能性

 海外に目を向ければ、韓国のチェーンマムズタッチも、2021年より、チキンバーガーを武器に世界展開を始めている。現在はタイ、モンゴル、日本ほか、ラオス、ウズベキスタンに進出予定のようだ。

 背景には、チキンの扱いやすさもあるのだろう。宗教面でもチキンは、牛肉や豚肉に比べて比較的ハードルが低い。いわずもがな、イスラム教では豚肉が避けられ、ヒンドゥー教では牛肉が避けられるが、鶏肉は処理方法に対応すれば多くの地域で受け入れられやすいからだ。

 もしかすると、鶏肉価格が上がっても、各社がチキンを手放さない事情はそこにもあるのかもしれない。これからの外食市場では、牛でも豚でもなく、チキンをどう磨くかが、チェーンの成長力を左右する大きな要素になっていくだろう。

 同時に、日本の唐揚げを中心とした文化も、味の独自性と品質管理を武器にすれば、海外で十分に可能性があるのではないだろうか。たとえば醤油、生姜、にんにくを使った日本の唐揚げは、アジアを中心に受け入れられやすい土台がありそうだし、スパイスを調整すれば中東やインドにも対応できそうだ。揚げるという調理法は世界共通で、フライドチキン文化は米国、韓国、東南アジアにもすでに根付いている。海外からの観光客にもファミチキは人気だそうで、「たまごサンドイッチにはさんで食べる」のが一時はブームだったと聞く。

 KFCの値上げは、チキン市場の逆風を示すニュースではある。しかし同時に、バーガー価格を据え置いたことは、チキンの成長余地を示している。チキンは安いから売れる食材ではなく、日常、催事、健康志向、インバウンド、海外展開までつながる戦略食材になった。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト。コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ『FNN Live News α』レギュラーコメンテーター、TOKYO FM『馬渕・渡辺の#ビジトピ』パーソナリティ。近著に『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(馬渕磨理子氏と共著、フォレスト出版)がある。

デイリー新潮編集部

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