「時すでにおスシ!?」が40代以下のコア視聴率トップ 「日常」を描いた物語が高い評価を得ている理由

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斬新なセリフ

 みなとは誰にでも自分をさらけ出すフランス人生徒のセザール(Jua)に感心し、自分がそうなれない理由をこう漏らす。

「私の心には傷口みたいなところがあるから。(他人が)傷口を見たら、『おっ』と思うでしょう」(みなと、第4話)

 傷口とは事故の朝の後悔。みなとにしては踏み込んだ言葉だった。学校のクラスメイトだから言えたのだろう。一定の距離を置かなくてはならない職場の同僚では難しいはずだ。みなとは傷口を話せない理由をこう語った。

「人に話すと、後悔が軽くなっちゃうから」(同)

 みなとは航に対する罪悪感を抱いている。朝の見送り方が普段どおりだったら、事故はなかったかもしれないと思っている。それは無理でも衝突したまま逝かせたくなかった。

 みなとの考えすぎとは言えない。誰でも親や配偶者など大切な存在を失うと、「もっと、やってやれることがあったはずだ」などと自分を責めてしまいがちだ。

「傷口」「人に話すと、後悔が軽くなる」といったセリフが斬新さを感じさせる。脚本を書いているのはテレビ朝日系「マイダイアリー」(2024年)で向田邦子賞を受賞した兵頭るり氏。今回でわずか8作目の新鋭だ。

 脚本を学んだのは東京芸大大学院。日本を代表する脚本家で同大学院客員教授の坂元裕二氏に師事した。師匠との共通点は人間の心の奥底に隠れたものを引っ張り出し、言葉や映像にすること。また凡庸なセリフがないところも2人は同じだ。

「鮨アカデミー」にはまだ生徒がいる。柿木胡桃(ファーストサマーウイカ)は元大手コンサルタント企業社員。35歳。鮨のビジネスを始めようと考えている。AIを一番信頼し、ほかの生徒をどこか見下していたが、みなとの人生経験に裏打ちされた助言によって変わる。人当たりが優しくなった。みなととの出会いをもたらしてくれた学校の効用だ。

 森蒼斗(山時聡真)は親に内緒で大学を中退し、学校に入った。それを知った大型トラック運転手の母親・温子(佐藤江梨子)は怒り狂う。自分と漁師の夫が中学卒業止まりなので、成績の良かった蒼斗には大学を出てほしかった。なにより、蒼斗が「大学には行っている」とウソを吐いたことが許せなかった。

 みなとはここでも助言する。「子供のウソには2種類あると思うんです」(第5回)。誰かを欺くためのウソと、誰かを心配させないためのウソである。蒼斗のウソは後者である。

 それでも温子は嘆き、蒼斗に期待していた自分を恥じる。だが、みなとは笑顔で言った。「いいじゃないですか。期待したって。親なんですから」(同)

 蒼斗のほうは静岡県焼津市にある祖父・克己(でんでん)の鮨屋を継ぎ、立て直そうとしていた。温子はみなとの言葉によって考えをあらため、蒼斗を許す。みなとはクラスメイトの将来を動かし、その家族とも結び付いた。学校に通ったからこそである。

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