銀行も会員制も「貸金庫」で相次ぐ“事件”…美術品コレクターが貴重な作品ほど「自宅に置く」ことを選ぶ“納得の理由”とは

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貸金庫のほうが、セキュリティが不安?

 さて、貸金庫は自宅の金庫よりも安全で安心であることを主張し、顧客を獲得してきたが、隣にある金庫の利用者が中に何を預けているのかを知ることはできない。契約者以外が中身を見ることは原則としてできないことから、「ブラックボックス化している」「マネーロンダリングに使われているのではないか」などの批判は以前からあった。

 さらに、民間の貸金庫は契約が簡単なせいで、金庫内に“怪しい人”が出入りしているという指摘もあり、「かえって危険なのではないか」という意見もある。こうした実態から、貸金庫に預けること自体を、不安視する人も少なくないという。

「貸金庫は信用できない。大事なものは自宅か、目の届く場所に置いておくのが一番です」と話すのは、資産家で、美術品のコレクターB氏である。貴重品やコレクションは自宅マンションに置いているといい、置ききれない分はマンションの隣の一室を借りて保管しているという。

「以前は銀行の貸金庫を契約していましたが、行員が着服したというニュースを聞いて信用できなくなり、解約して自宅で保管するスタイルに切り替えました。うちのマンションは管理人が24時間常駐していますし、上層階になればなるほど窃盗に入られるリスクが少ない。以前に貸金庫に預けていたものはすべて、自宅の金庫で保管しています」

自宅に貴重品を置いておく安心感

 B氏は、結局のところ、“身近に大切なものがあること”が、一番精神的にも安心できるのだという。

「私の財産でもっとも価値が高いのは美術品です。倉庫などに預けている人もいますが、ゆるい地盤の上に建てられていたり、海沿いに保管庫があったりするケースも見られ、災害発生時を考えると不安が残ります。貸金庫は、東日本大震災で被害が軽微だったと聞きますが、湿度などの管理も決して美術品に適しているとはいえません。

 マンションの部屋を借りるのはもちろん貸金庫よりも遥かにお金もかかりますし、手間です。しかし、最近の治安の悪化を考えると一軒家では不安だし、貸金庫の信頼が揺らいでいる以上、信用できるのは自分だということです。大事なものは自分の目が届く場所に置いておくしかない、というのが正直なところです」

 腕時計やブランド品など、ある程度量産されているものであれば、後から同じものを買い戻すことができるかもしれない。しかし、美術品は一点物だ。「万が一自然災害があり、銀行や倉庫が津波に飲まれてしまったら、気が気ではない。災害のリスクを考えると、大事なものは自宅に置くほうが良いと思っています」

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