レッサーパンダの帽子をかぶった男が、女子短大生(19)をメッタ刺しに…頭にぬいぐるみ、左手にフランスパン、1週間前から目撃されていた異様すぎる行動 なぜ事件は防げなかったのか 【レッサーパンダ帽殺人事件から25年】
誰もがギョッとする姿
が、その惨劇の主人公はすでに1週間ほど前から、現場近くの住民の恐怖の対象となっていた。レッサーパンダのぬいぐるみ帽子をかぶる長身の男――誰もがギョッとするこの姿が現場近くで目撃され始めるのは、つい4月下旬のことだった。
「ウチは現場近くの二天門通りに面しているんですが、1週間ほど前からその男を見かけました。とにかく変な人。家族で“何かなければいいけど”と話していた矢先でした」
と、住民の一人がいう。
「なにしろこれだけ暖かくなっているのに、あの帽子。あれ、写真では平面的だけど、実際に見ると本物の動物が頭に乗っかっている感じなんです。うちの娘も気味悪がってね。ある時、娘がごく間近で男を見て、その面差しにゾッとしたそうです」
別の住民によれば、
「現場から60メートルほど離れたところにある店屋のご主人が、事件前日に店の前であの男と肩がぶつかっている。相手を睨みつけようとしたら、意思を持たない目というか、普通じゃない表情だった、と」
異常な面貌をした痩せた若い男。身長こそ170センチから180センチまで開きがあるものの、異様な風体と共に、その目が強烈な印象を残している。
フランスパンを齧り……
そして事件発生の数分前、現場から200メートルほどの地点で目撃された犯人の姿はこんなものだった。たまたま車でそこを通りかかった都内の会社員がいう。
「花川戸1丁目の交差点で、現場方向に向かって信号待ちしていたその男を目撃したんです。あんまり異様なので、信号待ちの間、私は男の方をずっと見ていました。メガネをかけ、赤茶色の動物の帽子をかぶり、右手に茶色の傘を持って、左手には透明なビニール袋に入った30センチのフランスパンを持って、そのまま齧っていました。食べながらあちこちに視線を送り、心ここにあらず、といった感じ。事件の数分前ですから、ひょっとしたら、亡くなった女性が男の視線の先を歩いていたのかもしれません」
しかしこの会社員は、公開された似顔絵とは少し違うイメージを持っている。
「男の目は似顔絵のように厳しい感じではありませんでした。あれほど細くなく、もう少し大きかった。眉毛も似顔絵のような細くつり上がったものではなく、何の手入れもせず、そのままの太い眉。それに色白でしたよ」(同)
この1時間ほど前には、現場から500メートルほど離れた吾妻橋で、傘をさして包丁を持った同一人物らしき男に女性が声をかけられている。異様な事態は、まさに刻々と起こっていたのである。
***
犯人が事件前後に見せていたこうした異様な行動から、当局は容疑者を絞り込んでいった。そして冒頭に記した通り、10日後の5月10日、Yを逮捕している。では、凶悪犯罪に手を染めたそのYとは一体、どんな人物だったのか。実弟が語った、Yの秘められた来し方とは――。【後編】で詳述する。
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