妻への「劣等感」が消えない 有名企業勤務でシゴデキ、一方の僕は無職で酒びたり…「あなたは悪くない」と支えてくれた妻が別れを告げたワケ
こんな自分とは別れたほうが
父が突然、病死したのだ。心労もあったのかもしれない。アルコールに逃げたい気持ちになったが、信克さんはなんとか自分の足でしっかり立っていた。ただ、そこへ兄一家が入り込んできた。
「兄は東京で就職して結婚、子どももいたんですが、職場の人間関係がうまくいかずに退職した。もともと優秀な人だったのに、それを鼻にかけるところがあったから人とうまくやっていけなかったんでしょう。東京なんか捨てて実家に戻る、実家の商店を大きくすると決めたと母に訴えた。母は気弱になっていたし、病み上がりの僕より兄のほうが頼りになると思ったんでしょうね。兄一家を迎えることにしたと母に告げられました。もちろん、あんたもいていいんだからと言われたけど、僕は昔から兄が苦手で……」
戻ろうとした家には、もう別の風景が
自宅に帰ろう、瑛美子と娘と3人でがんばっていこうと決断したそのとき、瑛美子さんから離婚を切り出された。
「瑛美子、そのころつきあっている人がいたみたいです。そりゃそうですよね。瑛美子なら男が放ってはおかない。ただ、その人が娘をかわいがってくれるのかどうかだけが心配だった。すると瑛美子は、僕を彼に会わせたんです。娘もすでに『おじちゃん』と懐いていました。数年の間に、こんなふうにあらゆる風景が変わってしまうのかと愕然としました。でも僕には何も言う権利もないと思った」
黙って離婚届にサインした。相手の男性は「僕は父親の代わりにはなれても、血のつながりはない。あなたはもちろん、いつでも娘に会ってくれていいから」と言ってくれた。ありがたいと思う半面、その言葉にみじめさが増した。
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不運の連続のはてに、独り身になった信克さん。記事後編では、そんな彼にさらなる“不幸”が降りかかる。
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