「報告書を50万円で買って頂きたい」開業医200人以上に“脅迫状” 雑な文面でも金を払った事情は「80年代の黒い医療」か

  • ブックマーク

80年代老人病院の実際

 その一例は、老人病院の荒稼ぎぶりかもしれない。折しも「新潮45」1987年4月号では、保阪正康氏のドキュメントがその実際を詳細にレポートしている。

〈悪徳老人病院では、「老人患者はカネの成る木」「老人患者は等身大の金貨」といわれていて、生命はすでに病院を繁栄させるための経済活動に組みこまれていたし、老人患者の生命そのものが商品になっていた〉

 生命商品化の最たる手段の1つが「いかせる3カ月メニュー」というやつだ。

〈「いかせる」というのは、老人患者をあの世にいかせることだ。3カ月というのは、その期間がもっとも経済上の効率がよく稼げるからである。まず疾病をいくつもかかえている老人患者を入院させて、検査づけにする一方で、くすりを何種類も与える。むろんこのときのくすりは、薬価が高く、しかも大量に安く仕入れがきいて、差益の大きいくすりという意味である。疾病にきくというくすりなのではない。この「3カ月メニュー」で、老人患者からひとり1カ月に200万円近い保険請求額ができる〉

 そして3カ月が経ち、

〈老人患者を「いかせる」ことに決めると、末期治療が行われる。保険請求の高い医療機具がつかわれ、高価なくすりが連日にわたって投与される。保険請求点数は200万円から300万円、400万円とはねあがっていく。一般病院が20万円から30万円の治療をつづけているときに、この種の病院のレセプト(請求明細書)だけは真夏の水銀柱のように昇っていく〉

「あ、見つかったかな」と思ったから?

 保阪氏のドキュメントに出てくるのは主に老人病院の勤務医のケースだが、そうやって開業医になったからとて、金儲け思想と縁が切れるのか。

「はっきり言って、医者には一流と二流と三流があって、この三流というべき医者が全体の3分の1もいるんです。しかも、このクラスが一番金を稼ぐ。学会にも出なければ勉強もまるでしない。当たりさわりのない患者だけを診て稼ぎまくる。こういう医者になると、もう儲けることとゴルフと女ぐらいしか興味がないのです」

 と言うのは、医事評論家の生天目昭一氏。

「日本の医療を支えている大学病院や国立病院などの勤務医たちは、わけの分からないことをやって何億と稼いでいる開業医に立腹してますよ。(中略)この手のたわいもない郵便物をもらって、医者がなぜ金を出したかというと、『あ、見つかったかな』と思ったからなんです。架空診療か、所得の不正申告か、隠し財産かのどれか」

 そこに目をつけた犯人の狙いは実に的確だったようだ。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。