「ネット選挙」を取材し続けるITジャーナリストが「選挙にそこまでネットが必要か?」と考えるに至った理由…「選挙公報とニュースを読めば2~3時間で争点は分かる」

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必要なのはデジタルデトックス

 紙の選挙公報をゆっくり読み、気になった箇所にマーカーをひき、ネットで公式サイト等を少し調べ、ニュース記事を遡って見返せば、2~3時間ほどでだいたいの状況や構図、争点は理解できる。国政選挙の場合、選挙公報は投票の前々日までには自宅に届くし、それこそネット上でも閲覧可能だ。

 投票日の日曜日までの公示期間に、細切れになったとしてもどこかで2~3時間が取れない人がいたとしたら、それはもう隙間時間にボートマッチ(編集部註:vote match=有権者が自分の政治思想に最も近い候補者や政党を見つけるためのサイト)や政策比較のニュース記事を参考にしていただくとして。

 ネットを制する者が選挙を制す。だから、SNSを自分の情報とイメージで染め上げる。

 政党や候補者がそうした小賢しいSNSの使い方をするのなら、有権者はネットを離れて現実世界で自分なりの方法で冷静に検討すればいい。情報の飽和攻撃から自衛する手段は、デジタルデトックスにある。デジタルからアナログへ。

 問題はそれができるかどうかだ。簡単なことではないかもしれないが、毎日のことでもなし、投票前に少しぐらいはできるだろう。

 そもそも、政治の身勝手な論理に有権者が付き合わなければならない理由など、何ひとつないのだ。

 つまるところ、選挙とは推し活である、と思う。

必要な「アナログ選挙」との接触機会

 自身や所属する集団の利権に沿うように選ぶ、人的な繋がりによって選ぶ、全体の利益を俯瞰的に考えて選ぶ、サンクコスト(埋没費用)を意識してトレンドや風向きに従って勝ち馬に乗ろうと選ぶ──それぞれの理由があって、それぞれの推しが決まるのだから、単純な人気投票とは似て非なるものなのだ。

 投票所へ足を運ぶ有権者たちは、それぞれの推し活をそこまでの過程で勝手に繰り広げている。問題は、投票所へ行こうとしない有権者たち、無関心層や浮動層だ。彼ら彼女らを取り込み、競り勝つためにSNSという理屈はわからなくはない。

 しかし、だからと言って、切り抜き動画の絨毯爆撃、それ一択なのか。単純過ぎやしないか。

 いや、別にやってもらって構わないのだが、アナログな接触の機会も別で十分に確保しておく。それが、ゆくゆく全体のためにもなると思う。

 とりわけ、プランナーだ、勝手連だと称する人たちには、ネットだSNSだと連呼する前に、よくよく考えていただきたいと願っている。

 第1回【今やカバン、看板よりも「ネット地盤」だが…SNSが選挙の主戦場になるまで「ネット選挙」が全く盛り上がらなかったのはナゼか】では、ネット選挙前夜の状況をリアルに描き出す。

 なぜ政治家も識者もネット選挙に幻想を抱いていたか、ところが安倍晋三首相がニコニコ超会議に出席してもネット選挙が盛り上がらなかった状況など、ネット選挙の“原点”について詳細に報じている──。

井上トシユキ(いのうえ・としゆき)
1964年、京都市生まれ。同志社大学文学部卒業後、会社員を経て、98年からジャーナリスト、ライター。IT、ネット、投資、科学技術、芸能など幅広い分野で各種メディアへの寄稿、出演多数。

デイリー新潮編集部

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