「なんだよ、お前」憧れの黒澤明監督から強烈ダメ出し…「仲代達矢」が悔し涙を飲んだ「七人の侍」撮影、それでも縁が続いた理由
屈辱感で胸がいっぱいに
午後1時に撮影を再開してもうまくいかず、監督からは、
「俳優座はなにを教えているんだ!」
と怒鳴られ、出番を待っている三船さんたちからは冷たい視線を投げつけられました。ようやく午後3時になって、
「もういいや、OK」
と解放されたものの、僕のシーンがカットされるのは疑いようもなかった。屈辱感で胸がいっぱいになった。涙が溢れるほど悔しさが募りました。
僕は、まだ20歳のひよっこの俳優でしたけど、ムラムラと反骨心が燃え上がってきて、「もっと演技力を身に付け、今後、もし黒澤監督から声がかかっても、絶対に断ってやるぞ」と決意した。
完成した「七人の侍」は、映画館に観に行きました。本当に素晴らしい映画だった。なによりも、それに僕が映っていたのには驚きました。時間にして、わずか2秒でしたけども……。
「仕方ない、出ようか」という心情に
屈辱に満ちた「七人の侍」から7年後、黒澤監督から「用心棒」のオファーが来ました。その頃には、新劇俳優としても映画俳優としても割と名前の知られた存在になっていた。
僕は、俳優座のマネージャーに、出ませんと伝えました。黒澤監督は、「なんで、こんないい役を断るんだ」と言って、僕を渋谷にあった「菊屋」という旅館に呼び出しました。
「監督は覚えてないかもしれないけど、『七人の侍』でエキストラをやりました」
そう話すと、
「あの時のことははっきりと覚えている。お前がちょっと面白そうだったからこそ、撮影に半日かけたんだ」
という答えが返ってきた。黒澤監督のその言葉を聞いて、「仕方ない、出ようか」という心情になったのです。
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「仲代、空いてるか?」と僕にオファーが――。第2回【馬に睡眠薬、役者がスト、二日酔いで撮休…名優「仲代達矢」が見続けた“ピカソみたいな黒澤明監督”と“壮絶な撮影現場”】では、初の黒澤映画で主役を演じた「影武者」の撮影現場や、実現しなかった大作のアイデアなどについて語っている。





