「なんだよ、お前」憧れの黒澤明監督から強烈ダメ出し…「仲代達矢」が悔し涙を飲んだ「七人の侍」撮影、それでも縁が続いた理由

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

名前の読み方でひと悶着

 受験資格は、身長が175センチ以上であること。僕は177センチでしたので、俳優座養成所から受験した10人くらいのうちの1人に選ばれました。そのなかに、先日(編集部注・2014年3月)他界した宇津井健も入っていました。彼とは、養成所の4期生で同期だった。

 東宝撮影所で行われたオーディションには、大勢の俳優が集まりました。そこに、トレードマークの黒いサングラスをかけた黒澤監督が颯爽と姿を現した。監督は、身長が180センチ以上ありましたし、威圧感も備わって、僕は顔を向けられなかった。

 オーディションでは、黒澤監督から、「なかだいとは、どういう字を書くの?」と訊かれ、「人偏の“仲”に、先祖代々の“代”です」と答えると、

「それはおかしい。“なかしろ”か、もしくは、“ちゅうだい”って読むべきだ。“なかだい”では、音読みと訓読みが混じった重箱読みになる」

「先祖代々から、そうなんで……」

 そう理解を求めても、「ダメだよ。そういうのは」と、取り付く島もない。

 僕からすれば、演技とはなんら関係のないやり取りをしただけのようなもので、これではオーディションに落ちたと思っていましたけど、なぜか、宇津井健とともに合格メンバー数人のなかに入っていました。

「歩き方」でNG連発

「七人の侍」は、戦国時代、野盗と化した野武士から村を守るため、村人が傭兵を集めて、共に戦うというストーリー。その傭兵が、七人の侍というわけです。

 僕は、村人が傭兵探しをする往来を歩いているだけの侍の役で、セリフもありません。僕と同じエキストラの侍は数人いましたが、撮影が始まると、黒澤監督は、「お前、歩け」と、最初に僕を指名しました。主役の三船さんをはじめ、他の出演者も見守るなか、カメラが回った途端に、監督から、

「なんだよ、お前。それは侍じゃなく、現代人の歩き方だ」

 と、ダメ出しされました。今ならば、刀の重みで腰が落ち、すり足なのが、侍の歩き方であると理解できます。ただ、当時の僕は単に地のまま、ポン、ポンと現代風に跳ねるように歩いてしまった。

「もう一回」、「もう一回」、何度もNGを出され、午前9時にスタートしたのに、昼になっても終わりませんでした。監督は、チーフ助監督だった堀川弘通さんに、

「コイツには、メシを食わさずに練習させろ」

 と言いつけ、僕は皆が昼食を摂っている間、セットの裏で歩き方をずっと指導された。

次ページ:屈辱感で胸がいっぱいに

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。