「夫の赴任でジャカルタまで来たのに」34歳駐在妻が陥った孤独 救いのボランティア活動を邪魔してきた“まさかの敵”の正体は

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マンションのお局様から……

「ある日、同じマンションに住む、お局様のような年上の駐在妻に呼び止められたんです。そこで『そんなことをしないほうがいい』と、ボランティア活動を止めるよう言われたんです……」(瞳さん)

 瞳さんは、夫や夫の勤務先にも事前に確認し、了承を得たうえで活動していた。後ろ暗いことは何ひとつない。だからこそ、その場では毅然と反論したという。しかし、なぜこれほどまでに他人の私生活に干渉してくるのか。前川さんは次のように分析する。

「上の世代の駐在妻の中には、自分はやりたいことを我慢して夫に尽くしてきた、という強い自負を持つ方がいます。そんな彼女たちにとって、若い世代が自由に活動し、キラキラ輝いている姿は、自身のこれまでの歩みや価値観を脅かす、受け入れがたいものに映るのかもしれません。『駐在妻たるもの、家を綺麗に整えて、奥ゆかしく夫や子どもの帰りを待つのが務め』――。そんなふうに考える方も、決してゼロではないのです」

 こういった忠告があったことを瞳さんは夫に伝えず、自分の胸にしまい込んだ。正確には「伝えられなかった」のだ。それには理由があった。

俺の邪魔をするな! 夫たちの勝手な言い分

 瞳さんの動きを阻む壁は外側だけではなかった――。駐在員とその家族という狭い日本人コミュニティゆえに、妻が目立つことを嫌う夫たちも少なからず存在するのだ。

「妻がSNSで活動を発信したり、コミュニティ内で顔や名前が知られたりすると、夫が『奥さん、ああいう活動をしているんだね』と同僚から言われることがあります。それを『自分の評判に響く』『余計な目立ち方をして、仕事の邪魔をされたくない』とネガティブに捉える男性は、実は少なくありません。

 さらに、その心理の奥底には、独占欲や依存心も隠れていると前川さん。

「妻に、自分以外の居場所ができることへの不安や、自分を優先してもらえなくなることへの焦りもあるのでしょう。一部の夫にとって妻は、あくまで家庭という自分の城を守る存在であってほしいのです」(前川さん)

 残念なことに、瞳さんの夫もまた、無意識のうちに妻を家庭という檻に閉じ込めるタイプだった。

 ボランティア活動を通して、瞳さんに明るさが戻ってきたのとは対照的に、拓也さんは不機嫌になることが増えていった。ある日、活動から帰宅した瞳さんを待っていたのは、ねぎらいの言葉ではなく、妻をなじるような言葉だった。

「誰のお金で、ここで暮らせていると思ってるの? お金にもならない無償の奉仕で、家のことが疎かになるくらいなら、そんなのはやる意味がない。しょっちゅう家を空けて、俺や子どものことはどうでもいいのか? ボランティアなんて自己満足はやめて、家のことだけやっていればいいんだ」

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