単身赴任先で出会った不倫相手がいきなり上京してきた…「部屋を借りてくれたら別れるから」 妻に疑われ、47歳夫の言い出せない“決意”
この関係の到達点はどこなんだ
幸せという気持ちとは少し違う、だが深い満足感が彼を包んだ。この満足感を、人は幸せと呼ぶのだろうか。ただ、満足感と同時に不安も押し寄せてきた。いつか友里に嫌われるかもしれない、ここがふたりの関係の最高地点かもしれない。妻にバレたらという現実的な感覚はなかった。
「この関係の到達点はどこなんだろう。そんなことをぼんやり考えていました。肉体と感情が最高点に達するとき、人はそこが最高点だとわかるのだろうかとか。愚にもつかないことですが。友里に何を考えているのと聞かれたから、そんなことを答えたんです。そうしたら彼女、笑い出して。『私はね……、ただただ、とーっても気持ちがよかった。それだけよ』って。なんだか無性にうれしかった」
そうなれば通いたくなるのが男の常だ。章弘さんもそうだった。だが、友里さんはせいぜい週に1回、もしくは2週間に1回くらいしか許可しなかった。「馴れあいたくないの」と言ったが、友里さんもまた、いつかは離れていく関係を怖がっていたのだろう。
「僕からは常にアプローチしていました。友里と少しでも一緒にいたかった。でも単身赴任の部屋に彼女を入れるのだけは気が引けて。だからドライブがてら少し離れた街まで行ってホテルに入ったこともありました」
店で顔を合わせるときは
店にもときどき行ったが、ふたりは関係をもつ前と同じように振る舞った。意味ありげな視線も交わさなかった。そういうのは誰かが気づくものだと友里さんが言っていたからだ。
「他の客とも関係をもったことがあるのかなといらん嫉妬をしたりもしましたね。彼女はそういうとき、何も答えずに悲しい目でじっと見るんです。ごめんと言うしかなかった」
人から見れば、どんな不倫も「ただの不倫」だ。だが、当事者たちはこれが崇高な愛だと思い込むことも多い。そういうのは嫌だと友里さんは言った。
「私たちの関係は私たちだけがわかっていればいい。下品でも崇高でもない。私たちだけの関係」
その言葉がずっと支えになったと章弘さんは言う。
東京に戻ることに
2年前、彼は単身赴任を終えて東京に戻った。彼の地にはまた出張で行くかもしれないが、軌道に乗ったので回数は減っていくと予測できた。だが彼は「また来るから。仕事がなくても会いに来る」と友里さんに言った。あてにしないで待ってると友里さんは笑顔さえ見せた。だが彼はわかっていた。以前もそうだったのだ。友里さんの部屋をあとにして車に乗ろうとしたとき、なんだか嫌な予感がして部屋に戻った。チャイムで出てきた友里さんが泣いていたことはすぐわかった。
「その日は彼女のところに朝までいました。彼女はさっぱりしている自分を装っているだけ。そういう人なんです」
自宅に戻った章弘さんは、すぐに東京でのせわしない生活に慣れていった。息子たちも最初は毎日帰ってくる父親に驚いたようだが、すぐに慣れて懐いた。週末は家族で遊びに行き、今までの空白を取り返そうと彼は必死だった。
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