贋作疑惑、返還訴訟…ゴッホ「ひまわり」日本企業の“53億円落札”から39年 その後も騒動の「主役」であり続ける“名画の宿命”

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名画は常に「主役」である

 世界に名画は数あれど、日本で特に有名な作品といえばフィンセント・ファン・ゴッホの「ひまわり」である。1987年3月末、世界に衝撃を与えた記録的高値での落札。同年4月9日には、その購入者が日本の損保大手・安田火災(現在の損保ジャパン)だったことが判明し、国内外でさまざまな議論が沸き起こった。

 一方で、一連の騒動は日本におけるゴッホの知名度を向上させた。これまで数々の「ゴッホ展」や関連展が開催され、近頃も2025年7月からの「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」が、現在は「大ゴッホ展」が好評を博している。

 作品自体が持つ魅力はもちろん、まつわる“物語”もまた名画の条件。ゴッホ自身の生涯を含め、その作品にはひときわドラマが多い。1987年の“来日”後も、さまざまな騒動の主役となり続けている「ひまわり」を、「週刊新潮」のバックナンバーで辿ってみよう。

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5分足らずで53億円落札

 1987年3月30日、英ロンドンでオークションハウス「クリスティーズ」の競売が行われた。目玉はその日が誕生日にあたる有名画家、ゴッホの「ひまわり」。確認されている作品群7点(1点は日本で焼失)のうち1点である。それが5分足らずで、しかも2250万ポンドという超高額で落札されたニュースは瞬時に世界を駆け巡った。ある画商の証言。

〈「言い値が1300万ポンドを超えると、競売場の出席者からは声が上がらなくなりましたね。会場左手に並んだ8台ほどの電話のうち、外国からの指示を受ける2台の競り合いになって、2000万ポンドを超えた時には、『オーッ』と大きいどよめきが起こりました」〉(1987年4月16日号)

 その年の平均レート(1ポンド=236円)で換算すると約53億円。クリスティーズは買い手を「外国人コレクター」と発表したが、これほどの金額を用意できる“外国人”は限られている。そこで注目されたのは当時バブル景気だった日本。「落札者は日本人」の説を追った事情通はこう語った。

〈「中には『99%日本人に違いない』と断言するアメリカの画商もいました。では誰か。いろいろ調べてみたのですけれど、最近、政界のオークションで勇名を馳せている松岡清次郎氏も今回は違うようだし、5億円のモンドリアンを買って世間を驚かせた亀山茂輝氏でもない」〉(同)

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