贋作疑惑、返還訴訟…ゴッホ「ひまわり」日本企業の“53億円落札”から39年 その後も騒動の「主役」であり続ける“名画の宿命”
「ひまわり」とナチス
1999年、“本家”であるゴッホ美術館の研究調査により再び真作と断定。その後も「ゴーギャンによる複製画」説が流れたものの、本家による真作のお墨付きもあって「ひまわり」の周辺は静けさを取り戻した。
しかし今度は、本物であったことが逆に騒動を招く。2022年12月、米国イリノイ州の連邦裁判所で、所有権の返還あるいは時価相当額と損害賠償7.5億ドルを求める訴訟が起こされたのだ。原告はユダヤ人銀行家・美術収集家として知られたパウル・フォン・メンデルスゾーン=バルトルディの相続人である。
この背景には、1998年に44の政府と組織が合意した「ナチス没収品に関するワシントン原則」があった。ナチスにより没収・損失された芸術品の返還について元所有者と協議し、「公正で公平な解決」を探るという内容である。
この合意に法的拘束力はないが、世界では相続人らが動き始めた。日本でも2001年にパウル・クレーの水彩画「飛ぶ街」が、2004年にアルフレッド・シスレーの油彩画「春の太陽・ロワン川」がそれぞれ返還されている。
増え続ける「ひまわり」の物語
「ひまわり」に関する訴訟は、シカゴで「ひまわり」が展示された過去と、米国の2016年ホロコースト略奪美術品回収法に基づくものだった。だが、1年半後にはイリノイ州における「訴訟としての一般的な接点」が欠けているとして棄却され、2025年の控訴も同様の判断で棄却された。
「ひまわり」はそもそも自発的な売却であり、ナチスによる“略奪”にはあたらないと主張されている。この訴訟に関係した米国の弁護士事務所によれば、1934年にメンデルスゾーン=バルトルディがパリの美術商に委託。1987年にクリスティーズのオークションに出品したのは、その時の購入者だった。
今も増え続ける「ひまわり」の物語。“俗世”で騒動が起きるほど、花瓶に差された15本のひまわりはむしろ、純粋で穢れを知らぬ美しさが際立って見える。
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