「どないしょ。殺してもた…」 ICレコーダーに残された犯人の「おぞましい肉声」 2億5000万円の保険がかけられた会社社長を、役員がネクタイで絞殺 【事件から20年】

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「どないしょ。B、殺してもた」

〈もしもし。おい、Aのおっさんと、Bと何かやっとんのとちゃうか〉

 ボイスレコーダーには、第一発見者と会社の同僚との通話状況も記録されていた。録音が始まって21分後のこと。彼がB社長の上着を拾い上げて以降の様子が克明に残されている。すでにB社長は竹やぶの中で息絶えていた。

〈ぱっと見たら、Bの車が止まっとったんや。ほんで見たら、おまえ、Bの背広が道路に落ちとるしの〉

 と第一発見者が同僚に電話している。

〈で、事務所上がったら、誰もおれへんのや。(Aの)おっさんの車は裏に止まっとんや。ほんでおまえ、スタンガンも道路に落ちとったんや。おぉ〉

 そうして何人かの社員に電話をしていたかと思うと、突然会話がやむ。重い沈黙からこの男の緊張感が伝わってくる。

 ジャリ、ジャリ。

 暗がりを何者かが歩いて近づいてきた。男が月明かりに照らし出される。その顔は、紛れもなくAだった。

〈何しとったん? Bは?〉

 そう第一発見者が問いかけても、ハァー、ハァーと息を切らしているだけで、何も答えない。

〈いや、Bの車も止まってて、また何かごそごそしとんのかなと思って〉

 相変わらず、Aはハァー、ハァー息を切らし続けている。

〈で、これBのスーツや。あれ、何か落ちとら、思って〉

〈どないしょ……B……〉 (A)

 かすれた声で何かを発するA。

〈えぇ?〉(第一発見者)

〈どないしょ。B、殺してもた〉 (A)

 一瞬、絶句する第一発見者。

〈うそやん!〉(第一発見者)

〈つかまんの、かなんしのぉ(捕まるのは、かなわない)〉 (A)

口封じのために殺害か

 AがスタンガンでB社長を襲ってから第一発見者に出くわすまでの33分余り。当人は予想外の発見者の出現にうろたえたに違いない。自殺に見せかける偽装工作に失敗したのも、そのせいだろう。

 もっとも、第一発見者は、ボイスレコーダーに録音されていた女性の声の主とは遭遇していない。だが、07年2月に開かれた弁護側の最終弁輪において、検察官はこう指摘している。

「被告人が新生コンクリートの事務員に贈り物をするなど、好意を寄せていたと思われること、(中略)事務員が不正経理に関わっており、被害者もそれを知っていたため、被告人が口封じのために被害者を殺害した可能性が極めて大きいのではないか」

〈この事務員とは経理担当のC子のことである。事件前、新生コンクリートには4600万円の使途不明金が発生していた。むろん社長が私的に使った遊興費も皆無ではないが、ゴルフや飲食、営業上に不可欠な接待も少なくない。ところが、事件の前に行われていた集会では、使途不明金を全てB社長におっかぶせようとする動きがあった。会社の経理処理は、担当の女性事務員、C子が一手に握っていた。現実にはB社長とAの間では、C子の使い込み疑惑が最大の問題になっていたという〉

「そりゃ、わしだけやのうて、社員は皆、おばはん(C子のこと)一枚かんどんのとちゃうか思うてるよ。事件の晩その後も三田警察に呼ばれたけど、そのとき警察の人に、“事務員も事件に関係あんのとちがうんですか”と言うたもん。そしたら、“証拠がないとなぁ。本人は否定してるし”いう反応やったな」

 新生コンクリートの社員はそう打ち明ける。事件の背景にあった4600万円の使途不明金については、こう話す。

「経理操作の中身や使途の細目はもう分からん。まさにこれからそれを追及しようとしてたときに、Bが殺されてもうたんやから。おばはんは“私は社長から指示され、その通りやっていただけで、知りません”の一点張り。死人に口なしや。事件後、帳簿の断片が出てきたいう話もあったけど、“ない”言われたら、どないもならん。本人は300万を使うたんは認めたんやけど、“それはB社長からもろうた”と言い張るんや。ほんまに、おばはん、したたかや」

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