2億5000万円の保険がかけられた会社社長を、役員がネクタイで絞め殺し… 犯人は「主婦首なし殺人」でも逮捕の過去 今も残る「事件の最大の謎」とは【事件から20年】
「ずいぶん、会社の金を使い込んどるみたいやないか」
また、会社の使途不明金問題が浮上してもいた。 Aが社員を扇動し、B社長が会社の金を使い込んだのではないか、と糾弾していた。それが06年3月14日。犯行3日前の出来事だ。
「いっぺん話をしたいんやけど、来てくれるか」
午前8時、出社したばかりのB社長はAに声をかけられ、事務所の隣にある4階建ての社員寮へ連れて行かれた。その1階には会議室を兼ねた広さ12畳ほどの食堂がある。
「C子(注・同社の女性事務員)のことは話すんやないで。言うたら承知せんからな」
そう言われ食堂のドアを開けると、そこは異様な空気が漂っていた。 ミキサー車の運転手や他の従業員たち、三脚に設置されたビデオカメラが2台、待ち構えている。 そのままテーブルの中央に座らされ、カメラがB社長をにらむ。
「ずいぶん、会社の金を使い込んどるみたいやないか。どう責任取るねん」
B社長が集中砲火を浴びる。後に判明したことだが、新生コンクリートには4600万円の使途不明金が発生していた。むろん社長が私的に使った遊興費も皆無ではないが、ゴルフや飲食、営業上に不可欠な接待も少なくない。ところが、糾弾集会では、使途不明金を全てB社長におっかぶせようとしていた。
むしろ会社の経理処理は、担当の女性事務員、C子が一手に握っていた。現実には社長とAの間では、C子の使い込み疑惑が最大の問題になっていたという。
「C子には、会社の口座から無断で300万円を引き出した形跡、さらにB社長から預かった300万円を横領した疑いがある。彼女は経理処理にあたり、帳薄もつけていないと言い張り、B社長の死後、すべてを彼のせいにしていた」(捜査関係者)
社長と事務員以上の「親しい間柄」になっていた二人
B社長には弱みもあった。40代のC子とは社長と事務員以上の親しい間柄になっていた。だから、社員に対して言い訳できない。そこを突かれたのだ。
しかし、実は彼女はB社長を裏切っていた。というより、自分自身の使い込みがばれるのを恐れていたのかもしれない。この頃C子はAと急接近していた。A自身もいつしか彼女のことを「C子さん、C子さん」とファーストネームで呼ぶほど親しくなっていたという。
糾弾集会の直前、「C子のことは話すな」とAが念を押したのも、彼女をかばうためだったとみられる。そうして社員食堂で異様な糾弾集会が開かれた。朝8時過ぎから夜遅くまで延々11時間。B社長は携帯電話も取り上げられ、なすすべがなかった。打ちひしがれ、いったん社長の引責辞任を申し出る以外になかったという。
しかし、B社長はすぐに逆襲に出る。友人と相談した上で、糾弾集会の2日後の3月16日、再び開かれた会議に臨んだ。そこで、言った。
「やはり不明金の行方を全て明らかにしたい。組合の支部で話をする」
組合支部とは新生コンクリートが所属する建交労関西支部のことだ。それを聞いたAは、明らかにうろたえていたという。事件は、このB社長の発言があった翌17日に起きたのである。
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