ミイラ化した遺体が「紅茶を飲んだ!」…信者殺害の「ライフスペース」高橋弘二代表 血塗られた来歴と“その後”

国内 社会

  • ブックマーク

サイババからメッセージ

 ライフスペースのそんな近況をメディアが報じ続けて3ヶ月になろうとしていた2000年2月22日、高橋をはじめとする関係者10人がついに逮捕された。ホテルに運び込まれたAさんに適切な治療を受けさせず、痰を喉に詰まらせて窒息死させたという保護責任者遺棄致死容疑である。しかしこの局面に至っても「グル」こと高橋は、Aさんの死亡に真正面から向き合わず独自の「定説」を繰り広げた。翌月3日、千葉地裁で開かれた勾留理由開示の法廷でも、こんな調子である。

「平成6年初めに、サイババから空耳やテレパシーの形でメッセージを受けるようになり、それを自ら行動した」

「これまで300人ほどシャクティパットをしたが、誰一人として、訴えを起こした者はない。苦情の手紙もありません。これからも命がけでシャクティパットをやります」

 取り調べでも高橋は“Aさんは生きていた”という主旨の供述を続けていた。「Aさんはミイラではない。定説にあるミイラの基準に達していない」と、またもや“定説”を持ち出し、その定説は「最高裁の定説図書館にある」などと言う。

「何から何までデタラメですが、グルの狡猾なところは、そうした定説の矛盾を突かれると“自分はサイババの弟子だ”などと関係のない話を始めたり、急に押し黙ったりして、相手のペースには乗らない」(地元記者)

懲役7年が確定

 Aさんは生きていた、とミイラ化した遺体の写真を公表し、Aさんの死の責任を警察に押し付けようとしていたライフスペース。のちに殺人罪で起訴された高橋の裁判では、Aさんの死の可能性を高橋がいつの時点で認識したかが焦点となり、一審・千葉地裁と二審・東京高裁で判断が分かれたが、2005年7月には「未必的殺意に基づく不作為による殺人罪が成立する」として弁護側の上告を棄却する形で、二審・懲役7年の判決が最高裁で確定している。

「被告人が,自己のシャクティパット治療についておよそ効果がないと認識していたとはいい難いが,少なくとも,本件ホテルに運び込まれたAの様子を自ら認識した後において,シャクティパット治療によっても,Aを救命することができないかもしれないと認識していたことは(中略)被告人がこれまでに脳内出血等の重篤な患者の救命治療を行ったことが一度もなかったことなどに照らして明らかというべき」(二審・東京高裁判決より)

 判決が確定したのは事件発覚から6年後のこと。すでに世間は、ライフスペースや高橋に対する興味を失っていたのか、これを報じるメディアも数社のみだった。

前編】では、重症化した信者に「グル」が施した800万円の“治療”の詳細を記している。死後4カ月、ミイラ化した遺体を前に、高橋が発した驚きの言葉とは――。

※本記事執筆に当たり、以下の雑誌記事を参考にしました。
「FOCUS」(1999.11.24、1999.12.15、2000.1.12、2000.3.8)、「週刊文春」(1999.11.25)、「女性セブン」(1999.12.2)、「週刊朝日」(1999.12.3)、「FRIDAY」(1999.12.3)、「週刊女性」(1999.12.7、1999.12.21)、「FLASH」(1999.12.7)、「NEWSWEEK」(1999.12.8)、「週刊宝石」(1999.12.2、2000.1.20)、「週刊読売」(2000.3.12)、「週刊新潮」(2000.3.16)、「FLASH臨増」(2007.12.1)

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
ノンフィクションライター。福岡県出身。2006年『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』でデビュー。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆。著書に『木嶋佳苗劇場』(共著)、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』など。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。