天使のような母をブチギレさせた「DV父」の僕への一言 再婚に反対したときも怖かった…「もとはこういう人だったんだ」
晴天の霹靂「再婚しようと思うの」
姉が大学4年生のときに、彼は某私立大学に入学。父から入学費用が届いたとき「私立大学にお金を出させたことで、父に復讐できたような気がした。浅はかですが、18歳の子の心理なんてそんなものかも」と彼は恥ずかしそうに言った。
「大学は工学部です。当時はパイロットになるための視力条件がまだ厳しかったのと、僕は飛行機が好きだけど操縦したいわけではないと気づいて、パイロットはやめました。飛行機関係の仕事に就ければそれでいいと思っていた」
姉は大学を出て就職、遠方へと引っ越していった。そして彼が20歳のとき、「天使のように優しい」母は、「再婚しようと思うの」と言いだした。これは彼にとって青天の霹靂だったし、あまりに「大きな裏切り」だったと表情が少し変わった。
「僕が自分自身の性自認や恋についていちばん悩んでいたころだったんですよ。なのに母は、僕らが成人になったとたん、軽やかに女として飛んで行こうとしている。羨ましかったんですね、たぶん。だから大反対したんです」
「あの言葉は怖かった」
母は困ったような顔をして彼の頬を両手で優しく包んだ。私がこのままひとりで年老いて、あなたに迷惑をかけるような怖いおばあさんになってもいいの? あなたも私もひとりの人間なの。自由に生きる権利があるのよ。
「あの言葉は怖かったです。脅迫以上の迫力があった。ああ、母はもともとこういう人だったんだろうなと思った。父に潰されかかったけど見事に抜け出して、さらなる自由を求めて羽ばたいていく。僕は太刀打ちできなかった」
姉は母の再婚に最初から賛成だった。賛成というよりは「好きにするのがいちばん」という立場だ。母は姉の言葉に力を得たのか、さっさと自宅を売り、息子のために小さなマンションを購入し、さらりと再婚していった。相手は職場で知り合った、バツイチの男性だという。会ってみると感じのいい人だったが、深く踏みこむつもりはなかった。「母の2度目の夫」として最低限のつきあいをしていこうと姉とも話し合った。
「でも不思議なことに日が経つにつれて、母の再婚相手の存在が僕の心の中で大きくなっていったんです。会いたいというわけじゃないけど、常に彼の面影が離れない。母の再婚相手だからなのか、僕の好みなのかわからない。ますます苦しくなりました」
大学を出て機械関係の会社に就職を決めた。飛行機に関係する企業だったから、彼は何もかも忘れて仕事に打ち込もうと決めた。
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自身の「愛するかたち」が曖昧なまま、社会人として生活を始めた友満さん。【記事後編】では、そんな彼が始めた結婚生活と思わぬ終局、現在に至るまでの半生を紹介している。
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