「百恵さんの息子」と呼ばれない三浦貴大 朝ドラ「風、薫る」で好演も…視聴率低迷の理由 浮上のカギを握る人物
視聴率が低い理由
「風、薫る」の個人視聴率は7~8%台を推移している。通常より1%程度低いが、これはNHKがあらかじめ見越していたはず。この作品で最初から高視聴率が取れると思っていたら、どうかしている。
まずヒロイン2人のモデルが無名に近い。モデルの大関和と鈴木雅は教育を受けた看護師(トレインドナース)の草分けであり、偉大な人物だが、知っていた視聴者は僅かであるはずだ。
ヒロインを演じる2人の女優にしても誰もが知っていた存在とは言いがたい。大関を原型とする一ノ瀬りん役の見上愛(25)はデビュー7年目だが、深夜ドラマでしか主演経験がない。鈴木を基とする大家直美役の上坂樹里(20)は同5年目で、主演をやったことがない。
そのうえ、放送済みの1週目と2週目は物語が暗く重かった。りんの暮らす那須地方でコレラが流行し、りんの父親・信右衛門(北村一輝)も亡くなってしまった。さらに、りんは亀吉とうまくいかず、おそらく離婚することになるだろう。
ただし、物語の全体像を考えると、やや低い視聴率も重苦しい展開もやむを得なかったのではないか。父親がコレラで死ななかったら、りんは看護師を志さない。亀吉と幸せに暮らしていたら、やはり看護師にならない。りんのモデルの大関も夫の女性問題が理由で離婚している。
当面のポイントは2つ。
まず、今月下旬からの看護学校編でどれだけ視聴者の共感を集められるか。
りんと直美は1886(明治19)年、玉田多江(生田絵梨花)ら5人の同志とともに梅岡女学校付属看護婦養成所に1期生として入学する。全員、決死の覚悟だった。決してオーバーではない。当時の看護師は酷い偏見に晒されていたからである。
「金のために汚い仕事も厭わず、時には命まで差し出す賤業」(『明治のナイチンゲール 大関和物語』田中ひかる著)
誤解が解けたのは大関と鈴木らが身を粉にして看護界のために尽くしたから。2人は学校を出ると、帝国大学医科大学第一病院(現・東大病院)で幹部看護師を務めながら勉強を続け、看護学の本を書き、優れた看護婦の養成も始める。
もう1つのポイントは実名で登場する大山捨松の存在。多部未華子(37)が演じている。捨松がドラマに登場すると、貴族院議員の夫・大山巌との華やか鹿鳴館外交ばかり描かれがちだが、それは一面。捨松は福祉活動に極めて熱心であり、日本に社会貢献という考え方を根付かせた。
捨松は賊軍となってしまった会津藩の家老・山川家の家老の末娘として生まれた。12歳だった1871(明治4)年から10年間は官費留学で米国に滞在。留学生の中には津田塾大学創始者で女子教育のパイオニアである津田梅子もいた。
留学中の捨松の聡明さに米国人は目を見張る。当時の女性教育の最高峰だったヴァッサー大学で英文学を専攻し、学年3番で卒業。卒論「英国の対日外交政策」に基づく講演は『ニューヨーク・タイムズ』に絶賛された。
一方で弱者を思いやる精神を厳しく説いた会津藩の教えを受けたためか、社会貢献にも熱心だった。米国で看護師資格も取得する。帰国後は日本に近代看護が存在しないことに愕然とし、1885(明治18)年に仲間と有志共立病院看護婦教育所(現・慈恵看護専門学校)を設立した。
捨松は物語の第5回と第8回に登場し、りんと直美と出会っている。2人を自分の学校に誘うのだろう。「ばけばけ」における錦織友一(吉沢亮)のように、もう1人の主人公になるはずだ。
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