天才ゆえの挫折と栄光「タイガー・ウッズ」が4度目の交通事故…2019年マスターズでの“奇跡の復活劇”を想う

  • ブックマーク

純資産が10億ドルを突破

 1995年、19歳でマスターズに初出場。1997年には史上最年少の21歳3ヵ月で同大会を初制覇。しかも通算18アンダー(270打)は当時史上最高のスコア。2位に12打差という記録的な大差をつけての優勝だった。それだけではない。人種差別が根強くあったアメリカ社会、中でもマスターズが開催されるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブはその象徴ともいえる保守的なクラブとして知られていた。その慣習・悪しき伝統を軽やかに打破し、歴史を変えたのが天才タイガー・ウッズだった。

 1997年4月号の米『スポーティング・ニュース』に、スポーツライターのデイブ・キンドレッドが次のように書いている。

《リー・エルダー(注・マスターズに出場した最初の黒人ゴルファー)が初めてオーガスタを訪れたのは1975年のことだった。その時、彼は40歳だった。そして62歳になったいま、タイガー・ウッズのために再びこの地を訪れた。その若者が優勝する日曜日の朝、エルダーは姿を見せると、オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブのクラブハウス脇にある巨大な樫の木の下でこう語った。『タイガー・ウッズがここで優勝すれば、それはジャッキー・ロビンソンが野球界の人種の壁を破った時よりも大きな意義を持つかもしれない。もはや黒人が1番ホールのティーへ歩いて行っても誰も振り返ったりはしないだろう』と》

 タイガーは単にゴルフ界のヒーローではなく、社会的な影響力を持つ大きな存在だ。アメリカ社会で伝統的に築かれているヒーロー像からすれば、タイガーはゴルフ場以外の“人生の舞台”でも模範的でなければならないはずだった。

 しかし2009年、最初の交通事故をきっかけに不倫だけでなく性依存症の事実も公となり、タイガーの社会的評価は失墜した。

 ゴルフの実績は群を抜いている。マスターズで初優勝した1997年から2008年までの間にメジャー大会だけで14回の優勝を飾った。これはジャック・ニクラウスの史上最多18回に次ぐ記録だ。PGAツアーの公式獲得賞金は歴代1位、総額で1億2000万ドル(約191億5000万円)にのぼり、米経済誌フォーブス(電子版)は2022年6月に「タイガー・ウッズの純資産が10億ドル(当時のレートで約1344億円)を突破した」と報じている。タイガーの収入は、賞金以外にもスポンサーとの契約収入などあり、それが賞金の10倍の規模と推定されている。

次ページ:もう一度、復活を

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。