松たか子、吉高由里子&高良健吾、蒼井優、駒井蓮…「大学の新入生」を描いた映画5選【春の映画案内】
傷つく学生たちの場所
〇「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」(2023年)
キャンパスは、恋愛やサークルなど魅力に溢れている場所だ。しかし他人との付き合い方が分からなかったり、ちょっとした言葉で傷つく人にとっては居場所を見つけるのが難しい。この映画はそんな人たちが集まるサークルを描いている。
京都の大学に進学した七森(細田佳央太)は、男らしさや女らしさという考えが苦手で、恋愛というものが分からなかった。入学式の日に知り合った麦戸(駒井蓮)と意見が合い、ぬいぐるみサークル・通称「ぬいサー」に入部する。そこはぬいぐるみに話しかける場所だった。
「ぬいサー」の部室には600体のぬいぐるみが置いてあり、世界の悲劇や矛盾を泣きながら話しかけたり、自身の弱さを語る先輩たちがいる。
恋愛感情が理解できない七森は、もう1人の新入生・白城(新谷ゆづみ)に交際を申し込んでみる。しかし同じベッドに寝ても何もしない七森は、別れを告げられる。そして麦戸は、あることが原因で不登校になり、家で一人ぬいぐるみを抱きしめていた。そんな麦戸を救いだそうと七森は……。
麦戸を演じた駒井は当時、慶應大学文学部在籍中のリアル大学生だった。サークルには仕事が忙しくて入れなかったらしいが、「本当は落語研究会や映画研究会に入ってみたかったです」と語っている。本人は楽しい大学生活を送ったようだ(「朝日新聞 Thinkキャンパス」2023年5月9日)。
この作品には、多くの共感が寄せられたという。思いがけない言葉で傷ついてしまう、そんな人もいるかもしれないと思いを巡らせるだけで、やさしくなれるかもしれない。
新入生の犯罪
〇「真夜中乙女戦争」(2022年)
奨学金やアルバイトの賃金で大学時代を過ごした人も多いだろう。この映画の主人公は厳しい生活を抜け出そうとして、思わぬ犯罪に関わる新入生だ。
一年生の“私”(永瀬廉)は、深夜の過酷なアルバイトで何とか大学生活を送っていた。入学式は出ていないし、学長の名前は知らないし、校歌も歌えないような学生だ。そしてつまらない授業は時間の無駄だと教師に詰め寄りコーヒーを投げつけられる、そんな日々だった。
しかし「まだ4月だ。ここで人生を完全にあきらめたくない」と、ある同好会へ入部する。そこでクールで理知的な“先輩”(池田エライザ)と出会った。
そしてもう1人、“黒服”(柄本佑)と知り合う。“私”の鬱屈を知った“黒服”は自分のアジトに誘う。そこには、“私”と同じように社会に反発を持った人間が集まり、東京を破壊する計画を進めていた。
“私”を何かと気にかける“先輩”の池田が魅力的だ。特にバーで歌う、ジャズのスタンダードナンバー「Misty」には聞き惚れてしまう。2人の心が通じ合う瞬間だ。
池田は、「高校生デビュー」(2011年)が映画初出演だった。その後も多くの作品に出演し、昨年6月には「リライト」で主役の小説家を演じる。音楽活動も2022年にファーストアルバムをリリースし、ミュージシャンとしても注目されている。
ラストに“私”は、命の危険が迫る“先輩”を助けようと奔走する。そこに未来の希望がかすかに見えた気がした。
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