元カープのエースが「大赤字」の米農家に転身したワケ 神奈川から鳥取に移住 「野球コーチとの共通点は…」
毎朝5時、6時から17時ごろまで
3年目が終了した時点で、5反(約1500坪)の田んぼは契約満了となり、4年目に当たる昨年、新たに10反(約3000坪)の土地を借りてスタートを切った。
「10反の内訳は、10年間耕作していない田んぼが二つ、5年放置が二つ、3年未使用が一つの計五つです。いずれも“うちの田んぼを使ってください”と地主の方から声がかかったものばかりでした。今年はさらに増えて18反程度になる予定ですが、そうなると7カ所に分散し、一つの作業を全部の田んぼで終えるのに5日くらいかかる計算になります」
面積が広がっても、米作りの中心は今も川口氏と妻、次兄の3人で行っているという。
「田んぼが増えても、作業の内容自体は変わりません。毎朝5時や6時に起きて、支度を整えると田んぼに向かう。着いたら、日の暮れる17時ごろまで作業を続ける。夏場は過酷な面もありますが、農作業で一番大変なのは田植えです。機械(田植え機)を使うものの、運転役と苗を手作業で載せる係が必要で、最初の年は私と次兄、妻の3人で代わる代わるやっていました。面積が広がるにつれ、さすがに友人・知人にも手伝ってもらうようになりましたが、重労働であるのは同じです」
5月中旬に苗を植えると、60日間ほど様子を見守りながら、根が定着するのを待つ。その後、「中干し」という作業に入るが、
「田んぼの水を一度、全部抜くんです。干上がらせることでストレスを与え、約1週間後に水を入れた時に稲が“待ってた!”とばかりに吸収して一気に伸びるのです。その後は田んぼに生えた雑草を抜いたり、高温対策として水の入れ替えを行ったりと、地道な作業が続くことになります」
10月に入れば、いよいよ収穫作業だ。
「コンバインを使いますが、私が持っている“四条刈”タイプは、新品だと1000万円は超える。だから格安の中古を買いました。コンバイン1台で事足りるわけではなく、同時に取れた籾(もみ)を軽トラに載せて乾燥機まで運ぶ人手なども必要となり、妻や次兄の助けは欠かせません」
収支は大赤字
気になる収支についてはこう明かす。
「トントンどころか、機械を買った費用などを計上すれば大赤字です。田植え機もトラクターも中古で買いそろえましたが、それでも数十万円の出費となりました。これら農業機械にかかる燃料代が年間約10万円。昨年は苗代だけで約15万円かかりました」
意外なことに、川口氏が作った米はJA(農業協同組合)には買ってもらえないのだという。
「理由は、農薬や化学肥料をほとんど使っていないため、JAの基準に適合しないからです。他方、星空舞は県が管理するブランド米となり、個人でネットや道の駅で売ることはできません。販売しようと思ったら一度、米穀店で買い取ってもらい、その上で販売店に流通させるプロセスを踏まなければならない。その手順に沿って今年、初めて約1トン分を一般販売しました」
地元のスーパーにも卸され、店側が〈川口さんが作られた美味しいお米〉などのPOP(店頭広告)を作成した効果もあり、すぐに完売したのだが、
「米穀店での買い取り価格は1キロ500~600円。つまり1トンといっても50万~60万円程度の売り上げにしかならないのです。ただ儲けはなくても、できた米を皆で食べて“おいしいね”と喜びを分かち合えるのが農業の醍醐味です」
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