元カープのエースが「大赤字」の米農家に転身したワケ 神奈川から鳥取に移住 「野球コーチとの共通点は…」
田んぼをグチャグチャに踏み荒らされ……
手応えとともに、さらなる飛躍を目指した3年目だったが、思わぬアクシデントに見舞われた。
「田んぼの周囲には獣除けの電気柵を設置していたのですが、イノシシが柵を越えて侵入しました。いい具合に成長していた1反分の田んぼがグチャグチャに踏み荒らされ、収穫は諦めざるを得ませんでした。他にも、同じ土地で化学肥料を使わずに作っていると、徐々に土の栄養が足りなくなってくることに気付いた。慌てて有機肥料を少しだけ混ぜたりしたものの、稲に元気は戻りませんでしたね。今年良かったからといって、次の年も良いとは限らない。農業の奥深さを学んだ1年でした」
野村克也の言葉
米作りに没頭していく中で、川口氏は野球やコーチングに通じる部分も見いだす。
「毎日のように葉の色や稲の成長を子細に観察しながら“水を替えようか”“肥料を少し足そうか”など、トライ&エラーを繰り返す。それら蓄積した経験を基に軌道修正を図っていくのが米作りです。私はプロ野球選手として18年間やってきましたが、現役時代は新しい球種を覚えたり、フォームを修正したりと、毎年マイナーチェンジを繰り返してきました。その点では、野球も米作りも“データの世界”であるといえます」
コーチ時代の記憶もよみがえるという。
「当時は、選手を観察しながら、どうすれば成長するかを見極めようとしていました。助言する際も、自分の経験に基づいたものでないと、選手はなかなか腹落ちしません。相手の反応を見てやり方やアドバイスの言葉を変えるなど、注意深く手をかけてあげるほど人も稲も成長する。亡くなった野村克也さんがよく“勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし”と仰っていましたが、まずい米にも必ず理由があります。“なぜ、こうなった?”と、その原因を追究していくことが大事なのだと改めて思いました」
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