なぜハンターは「朝日記者」の質問に反論したのか 「本当に可愛いんだったら箱罠に入ったヒグマの頭を撫でに来い」
7年前に猟銃所持の許可を取り消された北海道のハンター・池上治男氏(77)が処分の撤回を求めた裁判は、最高裁で逆転勝訴となった。その後の記者会見が思わぬ波紋を広げている。【全2回・前後編の後編】
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【実際の写真】玄関前が赤く染まり、血痕が… 「地獄絵図」と化したクマ被害の現場
会見では裁判担当の記者たちが次々と質問した。共同通信、北海道新聞、NHK、東京新聞……当然ながら、いずれも最高裁での逆転判決についての質問だった。
ところが、朝日新聞の記者がこんな質問をしたのだ。
「そもそも猟友会のハンターに依存していいのかという国内の野生動物管理に様々な課題はあると思うが、クマとの共存に向けて今回の判決に抱く期待などはあるか?」
これに対して池上さんは、一瞬、戸惑ったような表情を浮かべたが……。
池上:えーっと何? クマとの共存? あなた、クマとは共存できないよ。
続けて一気にしゃべり出した。
池上:“共栄”はなんぼかできるかわからないけれど、“共存”っていうのはまず無理! そこにクマが出た!(と騒ぎになったら)共存できないよ。それだけ危険だっていうこと。あるクマ好きの人から私の家に電話が来る。「人間75億人いるんだから、人間の1人や2人、やられてもいいんだ」。こうやって平気で私のところへクレームの電話が来るんですよ。だから、あなたもね、本当にクマが可愛いんだったら箱罠に入ったクマの頭撫でに来いって。すると(恐ろしさが)わかるから。
池上氏の主張はまだ続く。
被害者の遺族を考えろ
池上氏:ロイターもCNNも来ました。このクマ問題で世界中が笑ってますよ。日本のヒグマ行政について。人間が被害に遭うってことの意味は生きたまま喰われるんだよ。腹から喰われるよ。そして後は埋める。土まんじゅう作るっていうのは、その肉を後から食べに行く。そういう実態を知らない人は簡単にクマとの共存って言う。あなたがそう思ってるんじゃないと思うけど、クマとの共存って言ってしまったら、その被害に遭ったご家族の方がどういう思いをされるかってことを考えないと駄目だ。クマと戦って助かる人はほとんどいませんから。ヒグマだったらなおさらそうだ。この天井まで高いのがヒグマですよ。そんなのと、野生動物と共存するって安易なことを言っていたら、本当に人間、どこでも少なくなっちゃうよね……。
改めて池上氏に聞いた。
――“共存”って言葉に反応したんですか?
「いやいや、あの場でね、共存なんて言葉を使う人がまだいるのかと思って……」
――クマの駆除が報じられると、自治体などにクレームを言ってくる愛護団体がいると聞いてはいました。
「北海道の記者はね、私のところに取材に来るからわかっていると思うのさ。ハンターとして弟子になった記者もいるしね。でも、あの若い記者は見たことがなかったから、東京の記者さんかもしれないし、上司に聞いてこいと言われて質問したのかもしれない。シュンとしちゃって、ネットでも話題になっているようだから可哀想だったけれど、実際にクマが出たところでないとその恐ろしさはわからないからね。知らない人にはちゃんと説明しないといけないから」
最高裁での逆転勝訴を伝える朝日の記事に“共存”の文字はなかった。
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