「イラン人はプライドが高く、メンツを重視する」 戦争は長引くと元駐イラン大使が分析

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ポーカーとチェス

 では、どうなればイランのメンツは回復されるのか。一番は「相手側に、自らが手を出した行為を強く後悔させること」。だからこそ、アメリカが嫌がるホルムズ海峡の封鎖を断行して原油価格を釣り上げ、イスラエルに弾道ミサイルを撃ち込むなどしているわけです。

 私にとっては、トランプ大統領とイランは、ルールの違うゲームをしているように感じられます。トランプ大統領が「イランの軍事施設を100%破壊した」とか「今度は発電所を破壊する」などとブラフをかまし、いわば相手を欺くポーカーをしているとすれば、イランは淡々とチェスを指すかのようです。石油関連の施設が攻撃されると、必ずイランは対岸のアラブ産油国に報復しています。

 違うルールで同じゲームをしており、しかもお互いの次の出方がよく分かっておらず、かみ合っていない。このことが問題を複雑にしているように思います。だからこの戦争は、そう簡単には終わらないのではないか。そもそもまだ、双方が目的を達成するには程遠く、政治的に引けない状況です。

 先般、アラグチ外相から、日本船舶によるホルムズ海峡の通過を認める用意がある旨の発言がありました。私はアラグチ氏をよく知っていますが、親日家で非常に明晰な深慮遠謀の人です。

 例えば私が彼に会いに行くと、私が甘い物好きなことを知っていて、必ずケーキが用意されている。人を気持ちよくさせるのが得意な人でもある。でも、物腰こそ柔和であっても目は笑っておらず、交渉事にはシビアです。アラグチ氏はすでに日本側と交渉していると言っていますが、言葉通りに受け取らない方がいいと思います。むしろ、日本を揺さぶる意図はないか。私はそう感じるのです。

 石油ばかりか食糧にしても他国からの輸入に頼る日本では、世界の平和と安定こそが国益につながります。一方で、アメリカの同盟国でありながらイランとも友好関係を築いてきた、西側諸国の中では稀有(けう)な国です。

 過去にも第1次トランプ政権とイランとの緊張関係が高まった際、当時の安倍首相が両国の仲介役を担いました。日本には果たし得る役割があるとしっかり自任し、外交努力を続けてほしいと願っています。

齊藤 貢 元駐イラン大使

週刊新潮 2026年4月2日号掲載

特集「日本を悩ます『イラン攻撃』」より

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