「イラン人はプライドが高く、メンツを重視する」 戦争は長引くと元駐イラン大使が分析

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 やられたらやり返す――。事態に対処するイランの論理はそう映るが、そこに米国との根本的な行き違いがありそうだ。誇り高くも複雑なイラン人の精神性から、齊藤貢氏(元駐イラン大使)が行く末を読み解く。

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 この戦争が一体いつまで続くのかを見通すためには、イラン人がどういった人々なのかをよく理解する必要があります。

 まず、イラン人はプライドが高いことで知られています。これには歴史的な背景があり、かの地には数千年も昔、ペルシャ帝国という強大な国が存在しました。現代イランの人々も、帝国の末裔(まつえい)だという自負を強く持っています。

 他方でペルシャ帝国が滅んだ後、いったんはアラブ人に征服され、信仰していたゾロアスター教からイスラム教への改宗を強いられました。くさび形文字の系譜だったペルシャ文字もアラビア文字化を余儀なくされます。そんな中で、自分たちは不当に扱われている虐げられた民族だという意識を強く持つに至り、こうして複雑な国民性になりました。

 近代に入ると、今度はアメリカの介入を受けるようになり、民族主義者だったモサデク首相がCIAの画策したクーデターによって追放され、今度はアメリカに対する強いルサンチマンを抱くようになりました。その結果、1979年のイスラム革命で宗教的指導者を頂点とする反米的な政治体制が構築されたのです。

何よりもメンツが重要

 ただし、イスラム革命政権は宗教的で偏狭な聖職者が支配する独裁体制だと思われがちですが、決してそうではありません。実はイランは日本以上に大学進学率が高く、大変に勉強熱心な国民性で知的水準も高い。当然のように指導層はインテリが多いです。

 このたびの戦争にしても、「われわれは何が何でも戦い続ける」といった頑迷な姿勢ではなく、どこかで折り合いをつけることも予想されます。官僚体制も整備され、最高指導者や大臣、軍幹部らが殺害されても必ず後継者が出てくる構造です。

 また、これはイランのみならず、中東の一部の地域では親の許可を得ずに娘が勝手に男性と付き合うと、家の名誉を汚したとして二人ともあやめてしまう“名誉殺人”という文化があります。このように、中東においては何よりもメンツが重んじられるのです。

 最高指導者であるハメネイ師がアメリカ・イスラエルによって殺害されてしまい、まさにメンツがつぶされたままだとイランは認識していると思われます。このメンツが回復されない限り、停戦合意にいたる可能性は低いと考えるべきでしょう。

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