病院を“高齢者の集会所”にしないよう「喫茶店」や「カラオケスナック」に補助金を出しては? “ヒマな高齢男性”の居場所作りという令和の難題

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本当は生ビールが飲みたいのでは

 当然我々は、コーヒー一杯の客であろうとも、もてなす。その時は、無料のお冷やを追加し、居心地が悪くないよう配慮をする。だが、本当はもう一杯コーヒーを飲みたいのではないか? 本当は生ビールを頼みたいのではないか? とも思うのだ。

 日本の場合、高齢者=カネをしこたま貯めている、といったイメージが根強いし、店で働いていても私と麻里さんにドリンクを奢ってくれる高齢者はいる。しかし、店で多くの高齢者と接してみると、誰もがそこまでの金持ちではないと感じられる。仮に多少の蓄えがあっても、大病を患ったり、不慮のケガで入院したりするリスクは若者よりはるかに高いわけで、収入が限られている高齢者が“万一のため”に出費を抑えてしまうのは、心情的に理解できる。

 サービスを提供する側は、彼らにより楽しんでもらいたいと考えるのだが、代金を払う側からすれば、追加で600円ナリの生ビールや、400円ナリの紅茶を頼むのは憚られるかもしれない。だが、高齢者のQOLのためには、そこで注文を躊躇してほしくないのだ。

 店の運営側のホンネとしても、店の存続のために、このような高齢男性常連客の方々には追加の注文をしてもらいたい。もちろん、年金生活で金銭的にツラいのは分かるのだが、我々は、彼らの生きがいと娯楽に多少なりとも貢献しているわけで、そこは「もう一品頼んでもらいたいなァ……」というのが正直な気持ちである。

 高齢者にとって、病院という存在は、社会との接点を作って孤独感を減らすほか、そこに行くまでの散歩も含め、健康維持に役に立っている。我々高齢者相手の接客業も、同様の効果はあるだろう。だったら、飲食店を含め各種施設に日々通う方への助成金も作っていいのではないか。本当に、夕方前のお客さんは高齢者が圧倒的に多いのだ。孤独感を減らし、QOLを上げるという意味では、病院ほどではないものの、多少は地域に貢献している。病院へ行く代わりにこの手の施設へ行くようになれば、膨れ上がった国の医療費も下げられるかもしれない。

暇な男性高齢者のQOL向上をいかに考えるか

 それこそ、大学や企業の中に喫茶店を作り、そこに高齢者がやってきてコーヒーを飲めるビジネス、なんてものもアリだ。さすがにコーヒー一杯500円以上は取れないだろうが、その高齢者のQOLのためには、そうした場が必要であり、場の運営のためには、ある程度の補助金が必要である。「福祉」は病院や介護施設に分配してきたが、案外飲食店に対してもその分配はあってもいいのでは、と飲食店従業員としては思うようになった。

 麻里さんと私(特に麻里さん)と会えるということで、本当に高齢の男性が喜んでくれているのである。そうした状況が全国各地のカラオケスナックやら喫茶店で発生していることは間違いない。

 今、日本で課題となっているのは「暇な男性高齢者のQOL向上をいかに考えるか」である。それに加え、「医療費を下げるためにも、その他の分野への補助金を出す」ことだとバイト生活3ヶ月でひしひしと感じた次第である。

ネットニュース編集者・中川淳一郎

デイリー新潮編集部

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