名手・井端弘和が目を留めた英明・池田隼人 数字に出にくい遊撃手の“真価”

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 例年以上に多くのドラフト候補が集まった第98回選抜高校野球大会。その中で、派手な数字や前評判はなくても、強く印象に残った選手がいた。英明の遊撃手・池田隼人である。きっかけは、明治神宮大会後に井端弘和監督から聞いたひと言だった。【西尾典文/野球ライター】

余計な力みがない

「英明のショート、上手くないですか?」

 現役時代に球界屈指の守備力を誇った名手が、映像を見て思わず口にした評価。その言葉が頭から離れず、今大会で改めてじっくり見たいと考えていた。

 池田は香川県高松市出身。中学時代は高松庵治ヤングストーンズでプレーし、英明では1年秋からショートのレギュラーに定着した。昨秋に発足した新チームでは主将を任され、チームの四国大会優勝、明治神宮大会ベスト4進出に貢献している。

 ただ、昨秋の公式戦打率は.292。数字だけを見れば、いかにもドラフト候補という派手さはない。筆者も昨年の明治神宮大会で3試合を見たが、その時点ではドラフト候補という印象は薄く、プロのスカウト陣から強い評判を聞くこともなかった。

 それでも井端監督が目を留めたのには理由がある。守備を見る際に重視しているのが、捕球でも送球でも、いかに力まずにプレーできるかという点だ。実際に映像を見直すと、池田はその部分で確かに際立っていた。だからこそ、選抜での守備をもう一度しっかり見たかったのである。

 そして迎えた1回戦の高川学園戦。チームは5対3で勝利したが、池田は9回に送球ミスと捕球ミスで計2失策を記録し、打撃は4打数、無安打、3三振に終わった。

 ただ、それでも見どころがなかったわけではない。2回と6回には遊ゴロを無難に処理したが、フットワークやハンドリングに余計な力みがなく、いずれも捕球からワンステップで送球できていた。一見すれば平凡なプレーだが、井端監督が目を留めた理由がよく分かる守備だった。

何事もなかったかのように

 池田の真骨頂が表れたのは8回だ。1死一塁から相手打者が捉えた打球は、投手のグラブをかすめてわずかに方向が変わった。それでも池田は全く慌てずに捕球すると、迷わず自ら二塁ベースに入り、そのまま一塁へ素早く送球。併殺を完成させたのである。試合後、このプレーについて聞くと、池田はこう振り返った。

「相手の打者が一番バッターで足が速いのは分かっていて、セカンドにトスしていたら間に合わないと思ったので、自分で行くしかないと考えて迷わずに行きました。あと、セカンドの前田が、二塁手としてプレーし始めて間もないということもありました」

 一瞬の判断の遅れが、併殺を取れるかどうかを左右する場面だった。そこで相手打者の走力だけでなく、味方の状況まで踏まえたうえで最善のプレーを選べるのは見事と言うほかない。

 さらに印象に残ったのは、9回の失策について尋ねた際の受け答えだった。高校生の場合、ミスや凡打について聞かれると、悔しさをにじませたり、感情を押し殺しながら話したりする選手が多い。だが池田は、何事もなかったかのようにこう答えた。

「グラウンドがかなり濡れていて、ボールも濡れていたので、とにかく送球が高くなって後ろに逸れて進塁されるのが嫌な場面でした。だから低い送球を意識して、ショートバウンドになってファーストが捕れなくても、後ろに逸らさないことを考えて投げました。結果としてエラーにはなりましたが、走者が次の塁に進むことはなくて良かったです。守備では、とにかく焦らず、冷静さを保つことを徹底しています。今日みたいにエラーをしてしまっても、絶対に焦らず、自分から声を出して次のプレーに切り替えるように心がけています」

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