浜辺美波、深津絵里、樹木希林、岩下志麻…映画の中でお花見を 物語に「桜が溶け込んでいる」作品5選

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艶やかな四姉妹と桜

〇「細雪」(1983年)

 谷崎潤一郎の名作の3度目の映画化を、市川崑監督が手がけた。

 大阪・船場の旧家、蒔岡家四姉妹の昭和13年の春から冬までが、三女の縁談話と四女の奔放な恋愛を中心に物語られる。長女鶴子に岸惠子、次女・幸子に佐久間良子、そして三女・雪子を吉永小百合、四女・古手川祐子と映画界を代表する顔ぶれだ。

 京都嵐山の料亭で、四姉妹と次女の夫・貞之助(石坂浩二)ら5人の食事会から始まる。その後姉妹たちは花見の散策をする。平安神宮、大沢池、仁和寺と歩く四姉妹のなんと艶やかなことか。他の見物客が指をさして見とれるシーンもあるほどだ。

 長女役は当初、山本富士子を予定していたが、スケジュールなどの理由で断られてしまう。市川監督はパリの岸に電話し、「ミスキャストだけど出てくれ」と交渉したという。岸は最初、大阪弁が苦手と断ったが、結局引き受ける。その時のことを「ミスキャストだ、山本富士子さんの代役だと言われてノコノコ出て行ったわたしもわたしだけど、大変な役割を演じる羽目になった」と記している(岸惠子『岸惠子自伝』岩波書店)。

 しかし、画面を観ればまったくミスキャストなどではないことが分かる。冒頭の食事シーンでは、遅れて来た鶴子が部屋に入ってくるとパッと華やかになり、その後の花見シーンでも鶴子が一番美しく見える。

 物語は2時間20分にわたり船場の上流家庭の日常を見せてくれるが、桜と美女たちを眺めるだけでも得をした気分になる作品だ。

母の恋人を愛する

〇「桜の樹の下で」(1989年)

 桜の美しさが描かれた文芸作品をもう一つ紹介しよう。タイトル通り桜が重要なモチーフとなり、親娘で同じ男性を愛してしまう愛憎劇だ。

 京都の料亭の女将・菊乃(岩下志麻)は、夫とは別居し娘の涼子(七瀬なつみ)と暮らしている。東京の出版社社長・遊佐(津川雅彦)とは恋愛関係にあった。大学を卒業した涼子は遊佐にせがんで、秋田・角館の桜を見に行きそこで結ばれてしまう。やがて菊乃は2人の関係に気づいて……。

 遊佐が涼子と花見をする時、「自分が死んだら埋めた所に桜を植えてくれ」と言った男の話をする。そして「枝垂れ桜は色が濃くて生々しいから淫蕩でみだらな感じ」など、どう見ても口説いているとしか思えない話をするのだ。やがて涼子は母の恋人を自分のものにしたくなる。

 津川雅彦はこの時期、本作と同じ渡辺淳一原作の「ひとひらの雪」(1985年)で再注目され、「マルサの女」(1987年)などでも活躍していた。“色男”を演じたら右に出るものはいない俳優だった。

 一方、岩下志麻も1986年に始まった「極道の妻たち」シリーズで主役を張り、大きく注目されていた頃だ。岩下は当時を振り返ってこう語っている。「私の女優人生でも異色の作品。それは『女そのもの』を描いているからです。一人の女として愛に生き、命を燃やし尽くした菊乃を演じることはひとつの挑戦でした」(「週刊現代」2022年4月30日・5月7日号)。

 岩下と津川。この2人の円熟した演技を観るだけでも楽しめる作品だ。

稲森浩介(いなもり・こうすけ)
映画解説者。出版社勤務時代は映画雑誌などを編集

デイリー新潮編集部

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