浜辺美波、深津絵里、樹木希林、岩下志麻…映画の中でお花見を 物語に「桜が溶け込んでいる」作品5選
温かで穏やかなつながり
〇「博士の愛した数式」(2005年)
第1回本屋大賞を受賞した、小川洋子の小説を映画化。80分しか記憶が持続しない数学博士と、家政婦親子の温かなふれあいを描く。
若い数学教師(吉岡秀隆)が教室で、10歳の頃の思い出を語り始める。母の杏子(深津絵里)は、1人で彼を育てながら家政婦として働いていた。ある日、交通事故で記憶が80分しか保てない数学博士(寺尾聰)の家に雇われる。やがて、子供好きな博士の提案で息子も訪れるようになった。
記憶が保てない博士にとって、杏子は常に初対面だ。「君の靴のサイズは?」「24です」「ほぅ、実に潔い数字だ。4の階乗だ」。この会話が毎朝繰り返される。博士のジャケットには、大事なことを忘れないために書かれた紙が何枚もピンで留められている。
家にこもりがちな博士を杏子が誘い、散歩に出かけるシーンがある。桜の満開の下を歩く2人。双方の心がつながったようで、とても穏やかで気持ちの良い場面だ。
親子は数学を愛する博士に魅せられ、数式の中に秘められた美しい言葉の意味を知る。「友愛数」「素数」「オイラーの公式」、そして江夏豊の阪神時代の背番号28が「完全数」であること。ともに阪神ファンである博士と息子は親友のようになった。
テレビや映画の「大捜査線」シリーズで広く知られるようになった深津だが、ここでは清らかで誠実さを感じる演技を見せ高い評価を得た。深津は当時「いろんな場面で想像力が掻き立てられ、イメージがふくらむ作品です」と思いを語っている(「キネマ旬報」2006年2月上旬号)。
生の尊さとあん作り
〇「あん」(2015年)
元ハンセン病患者の生を慈しむ姿と、その人生に触れる人々のドラマ。
どら焼き屋の店長・千太郎(永瀬正敏)のもとに、満開の桜のトンネルをくぐり徳江(樹木希林)がやってきて、この店で働きたいという。76歳だと聞き最初は断ったが、徳江の作る粒あんがあまりにも美味しいので雇うことに。その味は店に行列ができるほど評判になったが、徳江がハンセン病患者だったことが広まると客が来なくなる。そして徳江も店を去る……。
中学生のワカナ(内田伽羅)は家庭に問題がありいつも店にいる。千太郎もかつて事件を起こした過去があった。2人はいなくなった徳江に会うため、ハンセン病療養所の全生園を訪ねた。そこで徳江の歩んだ道を知る。
樹木をイメージして執筆したという原作者のドリアン助川は、河瀬直美監督に代わりロケ地を探した。見つけた場所は、西武新宿線久米川駅南口にある「さくら通り」だった。この映画をきっかけに美しい桜を見に訪れる人が増えたという。
樹木の自然な動きや、独り言のようにしゃべるセリフの上手さが光る。孫の内田との共演も注目された。内田は「仕事をしている祖母の姿を見るのは初めてでしたが、普段と変わらずいつも率直な祖母らしいと思いました」と語っている(「シネマトゥデイ」2015年4月6日)。
これまでハンセン病をテーマにした作品は、「小島の春」(1940年)、「砂の器」(1974年)、「愛する」(1997年)などがあるが、本作は生の尊さを描いた秀作である。
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