菊池桃子は「卒業」がトップ人気ではない? 中森明菜は「スローモーション」が2番手に 80年代アイドル「再評価」楽曲事情
早見優の証言
次に、早見優のSpotifyでの月間リスナーを調べたところ約4割が海外リスナーとなっている。そのことを知っているか本人に尋ねたところ、
「留学していた長女が大学1年生のころ、彼女の同級生のお兄さんが、(早見のデビュー・アルバム『AND I LOVE YOU』に収録の)『ゴンドラ・ムーン』を聴いていたらしくて。彼に、『日本から来たの? じゃあ、この歌手知ってる?』とジャケットを見せられ、これ、私のママと答えたら、えっ、(このジャケットの若い女の子が)君のお母さん!?、ってピンと来なかったそうなんです(笑)。つまり、その彼も『ゴンドラ・ムーン』がそんなに古い歌とは知らずに聴いてくれていたんですよね。
そのあと娘が日本に帰国して一緒に車に乗っていたとき、彼女が松原みきさんの『真夜中のドア〜stay with me』を口ずさんでいて驚きました。『どうして、ママのカラオケの十八番を知っているの!?』って。それくらい、若い世代の間で、昭和ポップスを聴くのが当たり前になっていますよね」(早見)
と具体的に語ってくれた。ちなみに、彼女の最大人気曲である「夏色のナンシー」自体は、圧倒的に日本で聴かれているのだが、前述のアルバム『AND I LOVE YOU』などシティ・ポップ系の楽曲が海外で人気のため、全体で4割となるわけだ。
その代表的な作品が、84年のシングル「誘惑光線・クラッ!」のB面曲、「緑色のラグーン」で、彼女のサブスク人気の中で「誘惑光線・クラッ!」が7位に対し、「緑色のラグーン」は3位となっている。
特に「緑色のラグーン」は、配信されているベストアルバムにも収録されていないのに人気なので、よほど多くのリスナーがプレイリストに組み入れて再生していると推測される。そのことを早見に伝えると、
「うれしいですね!今聴いても古い感じがしないし、メロディ・ラインはシティ・ポップと言われる作風にも当てはまるし、歌詞がちょっと可愛くて、最近も歌ってみて改めていいなと思いました」(早見)
と喜んでいた。
いわゆるヒット曲としてならば、シャンプーのCMソングにもなったA面の「誘惑光線・クラッ!」のほうがキャッチーなはずだが、早見はこの「緑色のラグーン」を、海外でこんなに人気になる前から「大好きな1曲」と公言していた。早見のセンスに時代が追いついてきたともいえそうだが、こうして記憶のヒット曲があぶり出されていくのも、サブスクの醍醐味といえる。
松本伊代の証言
さらに、早見と同期の松本伊代も海外で人気が高い。全世界で見た彼女の1位曲は、日本で圧倒的な人気の「センチメンタル・ジャーニー」だが、2位は、82年のセカンド・アルバム『サムシングI・Y・O』収録の「バージニア・ラプソディ」となった。キーボードで始まる洋楽テイストの明るいサウンドや軽やかな歌声は、歌謡曲時代の作品ながら、むしろJ-POPのノリに通じるものがある。この曲は8割以上が海外で聴かれており、主に強いのがアメリカ、そしてメキシコ、ブラジル、イギリスと続く。
本アルバムでは、リード・シングル「ラブ・ミー・テンダー」以外の全曲の作詞作曲を当時ブレイク前の二人(作詞:康珍化、作曲:亀井登志夫)が手がけているのも興味深い。ちなみに編曲はすべて、今や世界的に活躍している音楽プロデューサーの鷺巣詩郎が担当している。
「この曲やアルバムを聴いてくださっている方は、本当にお目が高いなと思います。実はいい曲だと、ちゃんと見つけてくださるなんて。私もこの歌は大好きで、当時からコンサートで歌ってはいたのですが、今聴くとイライラしてしまうほど、歌い方が軽いですね(笑)。でも、10代の私の歌声と、歌詞とメロディが見事にマッチした名曲だと思います。実は30周年くらいの時も歌いたかったけれど、歌詞が若さ全開で恥ずかしくて歌えなかったんです(笑)。一周回った今なら歌えると思って。今は船山基紀先生にアレンジしていただいて、大人っぽい雰囲気にしてもらっています」(松本)
このように、80年代アイドルのサブスク・ヒットは、その明るい歌声やサウンドからシティ・ポップ的な文脈で語られることが多いが、当時の二大巨頭であった松田聖子と中森明菜は、それだけでは語りきれないサブスク人気曲も出ている。
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