なぜ? 外国漁船が“メバチマグロを乱獲”したせいで日本の漁船がスクラップ処理…日本のマグロ漁船が55年前の“10分の1”に激減した意外すぎる理由

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「苦渋の選択」

 今年1月5日、東京・豊洲市場(江東区)で行われた初競りは、青森県大間産の本マグロ(クロマグロ)に、1本5億円を超える史上最高値が付いて大きな話題となった。近年、クロマグロのほか、2番目に高級とされるミナミマグロについても、日本をはじめとする漁業国による“資源保護”の成果で状況は良好。漁獲枠も増加傾向となっている。だが、ここにきて日本のマグロ漁船のうち数十隻がスクラップ処理され、ピーク時の10分の1に激減する見通しとなった。一体、どういうわけなのか――。【川本大吾/時事通信社水産部長】

 スクラップになってしまうマグロ漁船は漁業の花形的存在で、国内のマグロ供給量の多くを稼ぐ“遠洋マグロ延縄漁船”だ。全長50メートル、400トン級の漁船で、その多くは25人の乗組員が乗船できる。世界の海洋で半年以上操業し、船内でマグロを急速冷凍した上で、静岡県の焼津や清水港などに帰港。数百トンのマグロを一斉に陸揚げする。

 今回、日本の延縄漁船がスクラップ処理され、廃船となる理由は何なのか。その発端は“メバチマグロの乱獲”とされる。いまやメバチマグロは、クロマグロやミナミマグロを超え、寿司ネタや刺し身として日本で最も多く消費されるマグロである。だが、問題視されているのは日本の漁船ではなく、外国船による大量漁獲だという。

 なぜ、外国船による乱獲のせいで、日本の漁船を廃船にしなければならないのか。

 釈然としないが、意外なことに、日本のマグロ漁業者からは大きな不満の声は上がっていない。漁業団体幹部は、「苦渋の選択だが、メバチ資源が悪化する中で、物資の高騰や燃油の高止まりなどで赤字漁船も少なくない。この減船によってマグロ漁業の立て直しを図っていく」と、むしろ前向きな姿勢を示している。

「セーシェル」「インドネシア」「スペイン」などが過剰漁獲

 ここで、マグロ延縄漁船がスクラップ化に追い込まれた経緯を説明しよう。

 世界の海洋におけるマグロ資源の管理には、太平洋のクロマグロなどが「中部太平洋まぐろ類委員会」(WCPFC)、ミナミマグロは「みなみまぐろ保存委員会」(CCSBT)、大西洋のクロマグロなどが「大西洋まぐろ類保存国際委員会」(ICCAT)といった国際漁業管理機関が携わっている。そこで資源管理策が協議され、日本をはじめ漁業国の漁獲枠が決定されるのだ。

 クロマグロ、ミナミマグロについては、かつて過剰漁獲によって資源水準が悪化した時期があった。しかし、その後の漁業規制強化により、近年は資源水準が安定し、漁獲枠が増える傾向にある。日本近海でも漁業だけでなく、レジャー目的の釣り人からも「クロマグロが増えたおかげで、よく釣れる」といった声が上がっており、資源状態は良好だ。

 ところが、こうした高級マグロではなく、スーパーや回転寿司でお馴染みのメバチマグロについては、漁場のひとつになっているインド洋での過剰漁獲が大きな問題として浮上してきたのだ。

 インド洋でのマグロ管理は、インド洋まぐろ類委員会(IOTC)という国際管理機関で行われている。もちろん日本も加盟し、メバチマグロなどの漁業規制策を協議している。他の国際漁業機関に比べて漁獲枠の設定が遅れ、2024年に初めてメバチマグロについての総漁獲枠や国別の割り当て量が決まった。

 IOTCが設定したインド洋における2024年のメバチマグロの漁獲枠は、合計約8万600トン。これに対し、漁業国の漁獲量は合計約8万7000トンで、約6400トンもオーバーしており、資源の減少が懸念されている。

 水産庁によると、日本は同年、日本の漁獲枠の範囲内である約3000トンを獲ったに過ぎないが、外国勢は活発な漁獲となっているようだ。他国の詳しい漁獲データは明らかにされていないものの、同年「セーシェルなどが自国の枠を超過してメバチマグロを獲っていた」(同庁)という。23年までの漁獲実績をみると、セーシェルのほか、インドネシアやスペイン、台湾が1万トン以上もインド洋でメバチマグロを漁獲している。

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