「ばけばけ」熊本編で“急失速”した理由 成長しないヒロインと、大事なことを話せない夫婦の違和感
成長しないトキ
第119回(同19日)、ヘブンが次の勤務先が見つからずに苛立ち、本など家の中の物を倒すと、トキはお守りのヴードゥードールをつくっているから大丈夫と笑顔で慰めた。いくらトキが信心深いとはいえ、見るからに苦悩しているヘブンに掛ける言葉とは思いにくかった。
直後にヘブンが解雇を告白し、月給400円を失ったことを明かすと、トキは「そんなことでウチの家族は壊れません」と一笑に付す。この言葉には妻としての覚悟が表れていたものの、残念ながら説得力に欠けた。
結婚以来、3世帯を支えてきたのはヘブンであり、まさしく大黒柱。トキは収入を得る苦労と無縁の暮らしを送ってきた。その分、精神的な支えになっていたかというと、ちょっと疑問だ。
松江編は評判がすこぶる良かった。しかし熊本編からはかなり批判や不満が聞かれるようになった。理由はいくつか考えられる。その一因はよく指摘される通り、テンポが緩やかになり、空気感も変化したからだろう。
次に夫婦関係に進歩や成熟が感じられず、ゆえに夫婦に温かみをおぼえにくいのも原因だと見ている。さらにトキが松江編から少女性を持ったまま成長せず、以前と同じ振る舞いであることに対し、違和感を抱いた視聴者もいると考える。
たとえばトキの妊娠判明時である。病院で診察した医師・黒田(安井順平)から「もうお分かりですね」と告げられると、トキは「えっ、もしかして」と言いつつ、黒田の次の言葉を止めた。その次の言葉も再び「待ってごしなさい」と制した。制作側としてはギャグだったのだろうが、独身時代と同じ調子だったので、すんなりと受け止めるのが難しかった。
ましてや黒田とトキの場面は、ランからヘブンのフィリピン滞在記の話を聞いた直後。トキは傷ついていたはずだが、その素振りを見せなかった。この点でもしっくり来なかった。
第113回(3月11日)、トキは結婚手続きのため、ヘブン、長男・勘太と一緒に、生みの親である雨清水の戸籍に入ることになった。
松野の戸籍にはトキの初婚の相手・銀二郎(寛一郎)が残っているため、雨清水の戸籍に入るしかないという。
首を捻ったのは、もし銀二郎と婚姻関係が続いているのなら、別戸籍になっても重婚になってしまうのではないか。よく分からなかった。
「丑三つ時」を連想させる「雨清水トキ」に自分がなると分かったときのトキのけたたましい笑い声ばかりが耳に残った。
もう1つ。蛇と蛙(阿佐ヶ谷姉妹)のナレーションである。第96回から第120回までに「がんば」という言葉を3回使っているが、説明するまでもなく「がんば」は日本語ではない。イタリア語で「脚」だ。
「がんばれ」という意味で「がんば」を使う場合、俗語。登場人物の会話としてではなく、ナレーションで俗語を連発されると、かなり気になる。ヘビとカエルは独特の口調なので、なおさら。
物語の全編を貫くテーマはウソ。セツの著書『思い出の記』によると、ハーンは正直な人間を好み、ウソ吐きを嫌ったから、うまいテーマだった。
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