「ばけばけ」熊本編で“急失速”した理由 成長しないヒロインと、大事なことを話せない夫婦の違和感
ヘブンとトキは奇妙
朝ドラことNHK連続テレビ小説「ばけばけ」が間もなく終了する。松江編の第95回(2月13日)までは賞賛一色に近かったが、第96回(同16日)からの熊本編以降は批判がかなり目立つ。なぜ視聴者の意見は急変したのか。その理由を挙げたい。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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作家で英語講師のレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)とヒロインのトキ(高石あかり)は奇妙な夫婦だ。真っ先に配偶者に話すべきことを黙っている。
それが目立ち始めたのが熊本編以降。だから夫婦の物語でありながら、2人の関係に強い結び付きを感じにくかった。物語全体にも違和感をおぼえるようになってしまった。
ヘブンの場合、かつて好意を抱いていた編集者のイライザ・ベルズランド(シャーロット・ケイト・フォックス)から、フィリピンでの滞在記を書かないかと持ち掛けられたが、トキには黙っていた。第106回(3月2日)だった。
ヘブンは日本での執筆に限界を感じていたため、大きく心が動いた。この話は熊本第五高等中学校の同僚であるロバート(ジョー・トレメイン)と作山(橋本淳)には明かした。
トキにこの話を教えたのはロバートの妻・ラン(蓮佛美沙子)。第107回(同3日)だった。ランはてっきりトキも知っていると思っていた。夫婦なのだから、そう考えるのが自然だろう。トキは「どげんなるでしょうか、私は、家族は!」と狼狽する。
一方でトキは自分が妊娠したことをヘブンに伏せた。第108回(同4日)だった。同居する父親の松野司之介(岡部たかし)、母親のフミ(池脇千鶴)には明かす。住み込みの女中・クマ(夏目透羽)、書生の錦織丈(杉田雷麟)と正木清一(日高由起刀)にも伝えた。
トキがヘブンに妊娠を黙っていたのは、フィリピン行きを思いとどまる理由になってはいけないと考えたから。とはいえ、現実的にはヘブンが渡航を決める前に伝えなくてはならない話なのである。
それから10年が経過し、住まいは東京に移されたが、やっぱり2人は大事なことを話せていなかった。第116回(同16日)、ヘブンは勤務先の帝大を解雇されていた。しかしトキや家族には明かせず、朝になると用もないのに家を出た。ヘブンはストレスがバンバンに溜まっていたのではないか。
第117回(同17日)、司之介は解雇を知る。トキはまだ知らない。第118回(同18日)、司之介からトキたちが解雇を知らないと聞かされた丈は「えーっ」と驚く。普通の反応だろう。
ヘブンがトキに話すべきことを話せなかった最大の理由は彼女の少女性にあると見る。ヘブンとトキの年齢差は18歳だが、年齢よりも幼く感じる。お世辞にも頼りになるとは言えない。ヘブンがトキの幼さを納得したうえで、夫婦生活を送っているという描写にはなっていないのではないか。
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