「アナログ画材」復権の背景に“経済格差”と“地域格差” スマホはあってもパソコンを持たない家庭環境も一因か…あえてアナログで絵を描き始めるメリットも
現在、イラストの世界は大きな過渡期にある。生成AIの普及に伴い、“それなり”のクオリティーのイラストであれば、だれでも簡単に出力できるようになったためだ。パソコンを使って描かれた、いわゆるデジタルイラストの地位が揺らぎ始めているのは間違いなく、SNS上で「仕事が減った」と嘆くイラストレーターも少なくないようである。
そんななか、復権しつつあるのがアナログのイラストだ。デジタルはいくらでも量産が可能だが、アナログには一点物の価値があるため、主に美術品のコレクターや熱心な作者・作品のファンからは「複製品ではない、作家が直接描いた絵がほしい」という需要がある。人気の高いイラストレーターはファンに直接手描きのイラストを販売し、出版社の原稿料よりも稼いでいる例もあるという。【取材・文=山内貴範】(全2回のうち第2回)
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パソコンを持っていない家庭が少なくない
子供たちの間でも「手軽に始められる」点が注目され、アナログ画材の関心が高まっているようだ。秋田県の中学校で美術を教え、美術部の顧問も務める教師S氏がこう話す。
「“おじいちゃん先生”と呼ばれるYouTuberの柴﨑春道さんの動画の影響もあってか、“アナログで描けることは凄い”というイメージが高まっています。漫画やアニメが好きな生徒もアナログに魅力を感じていますし、注目度は高まっていると思います」
ちなみに、10年ほど前はアナログをほとんど経験せず、最初からいきなりデジタルで絵を描く人もいたという。ところが、昨今は“最初はアナログから”と、原点回帰しつつあるとS氏は言う。その要因は、家庭環境の変化も大きいそうである。
「少し前は親がパソコンを持っていたので、それを活用してデジタルを始める子供が多かったんですよ。ところが、最近の小~中学生の家庭では、パソコンやタブレットを持っていない家が少なくない。調べ物程度でしかパソコンを使わないならスマホで事足りてしまいますし、そもそもスマホの価格もパソコン並みになっている。パソコンを買い足すのは家計の負担が大きいですから」
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