「アナログ画材」復権の背景に“経済格差”と“地域格差” スマホはあってもパソコンを持たない家庭環境も一因か…あえてアナログで絵を描き始めるメリットも
デジタルは初期投資がかかりすぎる
スマホの画面でイラストを描くのはかなり難しく、デジタルイラストを本格的に描くなら、パソコンやタブレットが必要だ。かつて、デジタルのメリットとして、最初に高い機材を買ってしまえば、その後はランニングコストがかからないことが挙げられていた。マーカーやインク、スクリーントーンは消耗品だからである。
ところが、自身もイラストを描くというS氏は、そういった考え方が徐々に変わりつつあると感じているそうだ。
「現在、パソコンやタブレットを一式揃えると、30万円かかることはザラです。物価高によって、いくら子供のためとはいえ、一般の家庭で初期投資としてそこまで出すのはしんどくなってきています。
そういった家庭の懐事情のせいで、アナログ画材が選ばれている実情はあると思います。ネットでは“アナログもお金がかかる”と言っている人もいますが、ぶっちゃけ、紙とペンがあれば初めの一歩を踏み出せますから、圧倒的に初期投資はかからない。アナログほど手軽なものはないと思います」
地方では液晶タブレットが売っていない
プロも活用するマーカーであるコピックスケッチは、1本500円近い。確かに通常のマーカーと比べると高価だが、低価格のコピックチャオなら1本300円で、30本揃えても1万円程度である。これならばクリスマスプレゼントで贈れる、現実的な価格といったところだろう。
また、100円ショップでもマーカーや画用紙、クレヨンなど様々な画材が販売されている。こういった画材から出発して、プロ向けの画材に手を伸ばす例も増えているようだ。そして、アナログは地方の人にも優しい画材なのである。
「東京のように、専門性の高い家電量販店が身近にある環境であれば、最初からデジタルで始めやすいかもしれません。しかし、秋田県のような地方の場合は、確かに郊外に家電量販店はありますが、液晶タブレットなどを扱っているケースが極めて少ないですし、店員さんもそういった知識が十分ではありませんからね」(前出のS氏)
筆者の妻は漫画家で、池袋の「ビックカメラ」で液晶タブレットなどを購入しているが、「店員さんもイラストに詳しい人で、アドバイスが的確だった」と話す。池袋や秋葉原にある家電量販店には土地柄もあって、専門的な知識を持っている店員が在籍しているようだ。しかし、地方ではなかなかそれは難しいのが実情である。
「通販で買えるとは言っても、やはり手触りなどを見てから買い求めたいですよね。なので、私はアナログの絵をすすめています。デジタルは後からいくらでも始めることができるし、今の若い子はデジタルネイティブなので、使い始めたら上達が早い。だからこそ、絵の描き始めとしては、アナログから入ることは最適だと思っています」
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