早大法学部から強豪実業団チーム入り…女子マラソン「小林香菜」が語る異色のシンデレラガールが「世界陸上で入賞を果たせた理由」

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知人の縁で、実業団選手の道へ

 当てもなく実業団チームの扉を叩き、さほど進展もないまま着々と時は流れ、アプローチしたチームの数は気づくと10を超えていた。

「うちのチームはもう人数が埋まってしまっていて、残念ながらあなたを選手として迎え入れることはできない」

 この日も面談に出向いた実業団チームでそのように返事をされ、うつむく小林選手を見て、そのスタッフはこう続けた。

「あなたのことを応援したいから、知人のチームを紹介してあげる!」

 そう言われ、小林選手が手渡されたのが、大塚製薬陸上競技部の河野匡監督の連絡先だった。

「実業団に入りたい大学生がいることを噂に聞いていた」という河野監督から、悩みに寄り添うかのように「参考までにうちの練習に来てみない?」と声を掛けられると、小林選手はその誘いに二つ返事で答え、チームが拠点とする徳島に飛んだ。

 河野監督の人柄や、チームの恵まれた練習環境に心を奪われた小林選手は、入部を懇願すると、面接などを経て加入が決定。前代未聞の就職活動を終えた時には、季節は春をゆうに過ぎ、連日酷暑が続く夏を迎えていた。

実感がなく、訳がわからなかった優勝

 大学卒業後の2024年4月、徳島県を拠点とする大塚製薬工場に入社した小林選手は、知財法務部門で書類の作成に携わりながら、競技に打ち込む新生活を歩み始めた。

 前年11月の第12回富士山マラソンでは、2時間37分33秒の大会新記録を打ち立て、2連覇を達成。入社を2ヶ月後に控えた第43回大阪国際女子マラソン(2024年1月)では、2時間29分44秒の12位でレースを終え、微かな自信を抱きながら選手としてのキャリアを歩み始めたが……。入部したばかりの頃は、練習に追いつくだけで必死な場面も珍しくなかった。

 当初は練習について行けずに苦しみつつも、第44回大阪国際女子マラソン(2025年1月)の出場を決断。

「走り慣れたコースで、実力派のランナーを相手に自分がどこまでやれるのか」を確かめるべく、レース本番に挑んだ。

 代表争いの重圧がない小林選手は、序盤から果敢な走りを見せると、パリ五輪6位入賞を果たした赤﨑優花(当時、鈴木優花)選手をゴール目前で追い抜き、日本人トップの2位でフィニッシュ。目標としていた世界陸上標準記録(2時間23分30秒)を上回る2時間21分19秒でレースを終え、優勝インタビューでは「まだ実感がなくて、訳がわからないです」と困惑しつつ、喜びを噛み締めた。

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