愛した人の生まれ変わり、天国へ行く前の場所、死者と話すための電話…亡き人を悼む名作日本映画4選【春の彼岸の映画案内】
死者にまつわる行事や風習は世界中に存在するが、いずれもその地域の生死観が色濃く表れている。日本は春と秋の彼岸、夏の盆など、故人と先祖に思いを馳せる機会が多く、子供の頃は大きな家族行事だったという人も多いだろう。生者は死者を偲び続け、死者は生者の支えとなる。映画解説者の稲森浩介氏が選んだ4作品には、生と死を等しく尊ぶ日本の情緒が色濃く表れている。
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愛する人にもう一度逢いたい
〇「月の満ち欠け」(2022年)
佐藤正午の直木賞受賞作を映画化。事故で妻と娘を亡くした男と、愛する女性を失った男が「生まれ変わり」という不思議な現象によって出会う。
小山内堅(大泉洋)は、妻・梢(柴咲コウ)と高校生の娘・瑠璃(菊池日菜子)を交通事故で亡くし、失意の日々を送っていた。ある日、三角哲彦という男(目黒蓮)が訪ねてくる。娘の瑠璃は、かつて自分が愛した正木瑠璃(有村架純)の生まれ変わりだったのではないかと告げる。
小山内はその話を信じずに三角を追い返すが、数年後、瑠璃の親友だった緑坂ゆい(伊藤沙莉)から瑠璃が描いた肖像画のことを聞く。そこには、三角にそっくりな男性が描かれていて……。
三角と正木瑠璃が出会ったのは、1980年の高田馬場周辺だ。その日は、ジョン・レノンが射殺された日で、街には「Woman」が流れている。高田馬場駅は当時の様子が再現されていて、「BIG BOX」や待ち合わせの定番「甘栗太郎」などが映される。
生まれ変わっても…
そして神田川周辺での逢瀬、今も健在の「早稲田松竹」は「パール座」と並ぶ人気名画座だ。当時この辺りで過ごした人には、たまらない風景だろう。
三角は8ミリカメラで瑠璃を撮影するが、その時瑠璃が口ずさむのはオノ・ヨーコの「Remember Love」。小山内の娘・瑠璃が、子供の頃、急に歌い始めた曲だ。やがて2つの物語が手繰り寄せられるように重なっていく。
大泉は、自分にも娘がいるので感情移入しやすい役だったと語る。しかし妻と娘の遺体に対面するシーンでは、必ずしも涙が必要と言われていなかったが「あれはきつかった。耐えられなかったです」と振り返っている(「キネマ旬報」2022年11月下旬号)。
生まれ変わりを信じたくなかった小山内だったが、愛する人にもう一度会いたいと心が揺れる。そして思いがけない形で、妻の面影を見るのだった。
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