愛した人の生まれ変わり、天国へ行く前の場所、死者と話すための電話…亡き人を悼む名作日本映画4選【春の彼岸の映画案内】

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あの人へ語りかける

〇「風の電話」(2020年)

 本作は東日本大震災で家族を失った高校生が、「風の電話」にたどり着くまでのロードムービーだ。

 震災で家族を失った高校生のハル(モトーラ世理奈)は、広島県の叔母の家に身を寄せている。ある日、叔母が倒れ入院してしまい、ハルは家族と住んでいた岩手県・大槌町に帰るために家を出た。

 旅の途中に出会う人々に、三浦友和、西島秀俊、西田敏行らベテラン陣が出演し、物語に厚みを持たせている。彼ら自身も悩みや問題を抱えながらも、偶然出会ったハルを温かく包み込む。

 途中、ハルが家族の幻影を見る場面がある。その時初めて「この子はこんな顔して笑うんだ」と驚くほどの笑顔を見せる。しかし幻影はすぐに消え、笑顔も消えてしまう。

風を通して伝えたいこと

 モトーラ世理奈は、パリコレクションにも出演する著名なモデルだったが、2018年に「少女邂逅」で映画デビューする。「風の電話」では、失意から立ち直れない少女という難しい役を演じている。

 故郷に帰ると家はなく土台しか残っていなかった。そこに立ち「ただいま、帰って来たよ」と声をかけるが誰も答えてはくれない。やがて駅で出会った少年から「風の電話」のことを聞き、一緒に訪ねることになった。たどり着いた電話でハルが話すことは……。

 岩手県大槌町にあるこの電話ボックスは実在し「風の電話」と呼ばれている。庭師の佐々木格氏が私設し、後に震災被災者のために開放した。黒いダイヤル式電話が設置されているが、回線はつながっておらず、心の中で会話する場所として知られ、これまで4万5000人が訪れたという。世界中にこの電話のことが広がり現在550箇所以上に設置され、亡き大切な人へ言葉を届け生きる力を得る場となっている。

 ハルが電話をしている間、ずっと風が鳴る音が聞こえている。この風を通して、彼岸のあの人へ言葉が伝わるのだろう。

稲森浩介(いなもり・こうすけ)
映画解説者。出版社勤務時代は映画雑誌などを編集

デイリー新潮編集部

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