愛した人の生まれ変わり、天国へ行く前の場所、死者と話すための電話…亡き人を悼む名作日本映画4選【春の彼岸の映画案内】

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人生の思い出を語る場所

〇「ワンダフルライフ」(1999年)

「幻の光」(1995年)で鮮烈なデビューを飾った是枝裕和監督の第2作。人は亡くなると、天国に行く前に立ち寄る場所がある。その建物で過ごす1週間を描いた作品だ。

 受付で名前を言い、死者たちが病院か研究所のような古い建物に入っていく。待合室では皆和気あいあいと雑談をしていて、暗さは感じられない。年配の人だけではなく、若い男女もいる。やがて職員が一人一人面接をし、死者たちは自分の人生で一番忘れられないことを語る。最終日にはそれを映像化したものを鑑賞し、その思い出を持って天国に行くのだ。

 彼らを手助けする職員に、まだARATA名義の井浦新、内藤剛志、寺島進、小田エリカ、そして所長に谷啓が扮している。

 モデルから俳優へと転身した井浦は、これがデビュー作だ。今年のスロータウン映画祭では、ストーリーを全て伝えられないまま演じたと話し、是枝監督の「その場の感情を大切にする演技スタイルはその後の基礎になった」とも語っている。

あの人は何を語ったのだろうか

 死者役には、俳優と一般人が入り混じっている。面白いことに、一般人の思い出話の方につい引き込まれてしまう。

 少年時代に乗った都電の窓からの風がとても気持ちよかったこと。戦場で米兵に捕まって白米を食べさせてもらったこと。関東大震災で竹藪に逃げ、そこで食べたおにぎりが美味しかったこと。ワンピースを買ってくれた兄と食べたチキンライス……。

 是枝監督は「人生を振り返った時に人がどういう感情を露わにするか、どういう風に自分を見つめ直すかを描きたかった」という(「キネマ旬報」1999年4月下旬号)。

 最近大切な人を亡くした人がいたら観てほしい。あの人は今ごろ、あの建物で自分の人生を振り返っているのだろうか。そして何を語ったのだろうかと。そう想いを馳せれば、少しだけ悲しみが癒やされるかもしれない。

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