愛した人の生まれ変わり、天国へ行く前の場所、死者と話すための電話…亡き人を悼む名作日本映画4選【春の彼岸の映画案内】
生きていたことを覚えています
〇「悼む人」(2014年)
天童荒太の直木賞受賞作を堤幸彦が映画化。まったくの他人の死を悼むために、全国を旅する青年が主人公だ。彼と関わりを持った人々が抱えている生や死、家族への愛憎などの物語が複層的に描かれる。
小学生の兄が勝手に家の車を運転して弟を轢き殺してしまった家。暴力団員同士が女を巡る争いの末の殺人現場。坂築静人(高良健吾)は、そこで人が死んだ理由は考えない。ただその場に行って「あなたは多くの人々に愛されていました。そんなあなたが確かに生きていたということを私は覚えています」と祈るのだ。
静人に出会った雑誌記者・蒔野抗太郎(椎名桔平)は、袂を分かった重病の父親がいる。奈義倖世(石田ゆり子)は、夫(井浦新)を殺した過去を持ち静人の旅に同行する。そして静人の母・巡子(大竹しのぶ)は、末期がんで自宅療養をしながら、息子の帰りを待っていた。
生と死の尊さ
静人は、人が亡くなった現場で片膝を突き、右手を天に上げ空を払うようにしてその手を心臓の上に置く。次に左手で地を掬うようにし、右手に重ねる。そして祈る。死者が生前誰に愛され、愛したか、どんなことをして人に感謝されていたか、その生きている姿を覚えておくために。
筆者は公開当時、映画館で隣に座っていた女性が、静人と同じ手の仕草をしていたのを覚えている。自身の大切な人の記憶を、呼び起こしていたのかもしれない。
永六輔の『二度目の大往生』(岩波書店)に、「人間は二度死にます。まず死んだ時。それから忘れられた時」とある。一度目は医学的な死だが、誰かが覚えていれば、その人は心の中で生きていることになる。そして二度目の死は、すべての人の記憶から忘れ去られた時だ。
人の生きた証をとどめるために、静人の“巡礼”はこの言葉をなぞっているかのように思える。生と死の尊さを感じさせる作品だ。
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