都内タワマンに家賃を支払わずに住む「原発避難者」 福島県との訴訟に「最高裁判決」、それぞれの言い分
訴える資格がない
「この裁判の問題点の一つが原告適格です。今回、福島県が原告となって住民を訴えたわけですが、東雲住宅は福島県の持ち物ではありません。当事者は財務省ですから、日本国家の持ち物なんです。不法占拠を訴えるなら、建物の所有者が行うのが原則です」(大口弁護士)
本来なら国が住民を訴えるべきということだ。
「直接的には財務省になると思いますが、福島県が訴えたことには根本的な問題が残ると思います。そこをツッコまれると、福島県は東雲住宅を日本国から借りて避難者に貸したという立場であるから、本来、国が持っているはずの追い出し請求権を代理できる、つまり、債権者代位権を行使していると主張してきました」(大口弁護士)
一審も二審も、そして最終的には最高裁も、それを認めた格好だ。
「それを三浦裁判長は、認められない、差し戻すべきとまで言っているわけです。当然の正論です。高く評価されるべきです」(大口弁護士)
そして裁判長は、原発事故被災者の救済のあり方にも踏み込んだ。
「反対意見では《被災者にとって、生活の基盤を失って避難するという経済的にも精神的にも困難な状況の下で、その居住の安定に係る利益は、生存の基礎であって個人の尊厳及び幸福追求に関わる》と避難者の居住権を位置づけています。東雲住宅の問題を人権問題として据えているわけです。今回、福島県が訴えた方は、いずれも福島県民です。県は本来、地方自治体として、県民の福祉を実現する責任があると思います。それをせずに、原発から20キロ圏内かそうでないか、行政が引いた線の内側か外側かを基準にして自主避難者を訴えるというのは、行政の裁量権を大きく逸脱していると思います」(大口弁護士)
上告した50代女性は現在、都内でホテルのサービス業に従事。生活支援のヘルパーの助けも借りながら生活しているという。
まだ7世帯
住民を訴える資格、原告適格がないというと反対意見の指摘を、福島県はどう考えているのか。前出の県生活拠点課の担当者は言う。
「県としては一審から適格があることを訴えており、最高裁でも3人の裁判官が支持するとのことで、上告棄却の判決になったと考えております。そのため、反対意見について県から述べることはありません」(生活拠点課)
上告を棄却された50代女性は震災時、南相馬市に居住していた。南相馬は県内でも被害が最も大きかったところである。それには同情を禁じ得ないが、
「震災後に苦労したのは被告の50代女性ばかりではありません。反対意見の中には、無償期間が切れる17年3月までに除染特別地域や汚染状況重点調査地域の指定を解除したのは県内5町村にとどまるため、避難の継続に《合理的な根拠がある》との指摘がありました。一つのご意見としては承りますが、反対意見で《汚染が著しい》とあった福島市に私も居住しておりますし……受け止め方は人によるかもしれません」(生活拠点課)
そして担当者は、福島県に戻れと強要したわけではなく、東雲住宅からの退去を申し入れてきたが受け入れてもらえなかったため裁判となったと主張する。
「国家財産に無償で住み続けることができるわけでもありません。福島県では復興公営住宅の対象を自主避難者にも広げて応募を受け付けています。退去するための物件探しなどの相談にも乗っております。移転サポートなども利用していただきたいのですが……」(生活拠点課)
現在、東雲住宅の入居者はどうなっているのだろう。
「7世帯が入居されています。いずれの方にも退去を求めています」(生活拠点課)
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